6月23日から7月2日まで、在アルゼンチン日本大使館で参議院選挙の在外投票が行われ、ホルヘは投票の係をやってきた。
以前にも書いたが、この在外投票というのは非常に煩雑なのだ。
 
 
まず、投票を希望する者は、大使館を通じて日本に居住していた市町村の選挙管理委員会に選挙人登録をする。
登録されると選挙人証が交付され、それとパスポートなどの身分証明書を持参しないと投票ができない。
 
 
投票所では我々係員が、選挙人証と身分証明書を照らし合わせ、本人であることの確認をする。
身分証明書はアルゼンチンのものでもいいのだが、こちらの制度では、結婚しても女性の姓が変わらない。
選挙人証は結婚後の姓なのに身分証明書は旧姓が書かれていると、いちいち領事部で照会しなければならない。
 
 
本人確認が済むと、「投票用紙請求書」と「送付用封筒」に記入する。
交付番号だとか選挙管理委員会の住所だとか、書くことがたくさんある。
その後、投票用紙と内封筒、外封筒をもらう。
記入した投票用紙を内封筒に入れて封をし、それを外封筒に入れて封をして、登録している選挙管理委員会の市町村名など、また記入することがある。
 
 
それが終わると受領係に提出し、立会人の署名をもらってやっと終了。
記入の仕方や投票方法の説明もあるので、一人あたり15分はかかる。
高齢者は、一度の説明ではまず理解できない。
あまりにも面倒なので、それを理由に投票に来ない人もいる。
その一方で、選挙のたびにチリとの国境に近い街から来る人や、二世や三世で日本語が話せない、あるいは読み書きができないのに来る人もいる。
文字が書けなくとも、我々が代理人となって記入するという制度がある。
 
 
在外投票は1996年に認められ、その当時はどこの在外公館も「選挙人登録をしましょう」キャンペーンをやったそうだ。
そのためアルゼンチンでは3000人弱が登録している。
しかしその多くが高齢者となり、投票率は下がるばかり。
ホルヘの仕事もとにかく暇で、眠気をこらえるのが大変だった。
 
 
日本のある政党のバックには、巨大な宗教団体がついている。
選挙のたびに、信者たちは知人へ投票依頼をするなどの選挙応援をする。
この学会はアルゼンチンにもあり、ホルヘの知人は熱心な信者だ。
しかし選挙になっても、投票依頼などは一切しない。
そのような指示はないのだという。
つまり今は与党のK明党も、在外投票の微々たる票など無視しているのだろう。
 
 
とはいえ、これも清き1票に変わりない。
集まった票は外交クーリエで日本へ送る。
つまり大使館員がわざわざ持って行くのだ。
仕事は、票を届けることのみ。
片道30時間かけてとんぼ返りする。
ご苦労なことだ。
 
 
さて、投票期間中、ホルヘは「弁当男子」になった。
節約のため、毎朝6時半に起きて弁当作り。
しかし、後半は毎日同じようなものになってしまった。
日本では最近「モロッコインゲン」という名前で売られている、こちらではチャウチャという野菜がある。
八百屋でこれを見かけ250グラム買った。
ところがチャウチャは軽いものなので、250グラムはかなりの量だ。
これを全部煮てしまったため、連日チャウチャ弁当になった。
 
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なぜ250グラム(4分の1キロ)買ったかというと、これが買い物の一般的な単位だから。
アルゼンチンでは、パック売りは少なく量り売りが普通。
イチゴやサクランボ、ミニトマトなど小さなものは、250グラムでいくらと表示されている。
肉屋でひき肉を「200グラムください」といったら、「最低は250だ」といわれたこともある。
独り者には、最低単位が少し大きいので困る。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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