コパ・リベルタドーレスは、コロンビアのアトレティコ・ナシオナルが優勝した。
エクアドルのインデペンディエンテ・デル・バジェとの決勝戦は、インデのホームで行われた第1試合が1-1の引き分け。
標高2800メートルというキトがホームのインデは、高地という地の利を生かし、トーナメントでは常に第1試合を制していた。
しかしコロンビアにも2600メートルのボゴタがあり、A・ナシオナルは高地に慣れている。
もし決勝に上がって来たのがA・ナシオナルでなくブラジルのサンパウロFCだったら、無名クラブが奇跡の初優勝を成し遂げていたかもしれない。
 
 
試合は開始30秒でFWボルハがDFを振り切りGKと1対1になるが、上へ大きく外す。
しかし8分のFKで、ポストに当たり跳ね返ったボールをボルハが突き刺した。
この得点は、これまでインデを大黒柱として支えてきたDFミナのプレーによって生まれた。
ゴールに向かって蹴られたFKをクリアしようと、ミナはフライングボレーキックを試みる。
しかし、ボールにかすっただけ。
目前でこのプレーがあったことでGKアスコーナがボールに触れられず、ポストに当たった。
ミナが反応しなければ、アスコーナが楽に処理できたボールだった。
ミナは今大会で最も目立った選手のひとり。
その彼が最後の大一番で失点のお膳立てをしてしまった。
 
 
インデも34分に決定機があり、後半開始直後にはPKになるべきシーンもあったが主審は取らず。
ちなみにこの試合では、コパ・リベルタドーレス史上初となる追加副審が採用された。
追加副審というのは、ゴールに近いゴールライン上に位置し、得点の成否や反則の有無について主審をサポートする審判員。
しかしこの眼があっても、PK獲得はならなかった。
 
 
この追加副審について、ホルヘは一言ある。
それは、位置について。
追加副審は、通常の副審と同じサイドに立つことになっている。
しかし、これが問題だと思う。
ボールが完全にゴールに入ったかどうかを判定するのは、副審の重要な役目。
ところがGKなどの選手の身体がブラインドとなり、ボールが隠れてしまうことがある。
身体の向こうでボールがゴールラインを割っていても副審は確認できず、“誤審”と呼ばれることになる。
こうしたケースを防ぐために、追加副審は副審と逆サイドに立たせるべきだ。
主審の視界に入りにくいが、追加副審は無線で連絡するので問題はない。
 
 
結局ボルハの1発が決勝点となり、A・ナシオナルが優勝。
ホルヘは現場には行かず、テレビ観戦。
以前はコパ・リベルタドーレスの決勝へはほとんど行っていた。
1995年に、今回と同じくコロンビアのメデジンで行われたA・ナシオナル対ブラジルのグレミオとの試合が、初の決勝取材だった。
メデジン・カルテルで知られる悪名高い街なので、おっかなびっくりだったことを覚えている。
それでも夜は酒を吞みに出かけ、深夜にタクシーでホテルへ向かっていると、路上に人が倒れていて、周囲には警官の姿。
警官と二言三言話した運転手が、「射殺体だ」とこともなげにいう。
酔いが一気にさめた。
 
 
試合終了後、この試合のMVPとなったボルハのインタビューを観ていると、日の丸の鉢巻きをした東洋人がボルハの後方に映りこんできた。
なんとこれが都並さん。
彼はいつも、日本テレビの仕事で決勝に来る。
一昨年にサンロレンソが優勝したときは、試合後のピッチで偶然会ったが、「昨日着いて、明日帰る」というハードスケジュールだった。
 
 
MVPのボルハは、6月に加入して今大会へは準決勝から出場。
そしてなんと、4試合で5得点の大活躍。
リオ五輪メンバーなので、コロンビアと対戦する日本は要注意だ。
 
 
今回掲載している写真は、一昨年の国内リーグ決勝のもの。
このときは、優勝後のお祭り騒ぎでサポーター数名が死亡した。今回は大丈夫だっただろうか。
 
DSC_0017


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

Related Posts