2月5日の午後10時過ぎ、渋谷駅の構内でマック赤坂を見かけた。
 
小さな台の上に立ち、お得意の「10度、20度、30度」のスマイルパフォーマンスをやっている。
 
彼は9日投票の東京都知事選挙立候補者だ。
 
これも選挙運動の一環なのだろう。
 
しかし公示後は、選挙活動が許されるのは午後8時までのはず。
 
そこでホルヘが本人に直接訊いてみると、
 
「これは選挙活動ではなく、個人のパフォーマンスだから問題ない」とのこと。
 
そういえば、政治絡みはおろか、「10度、20度、30度」以外は何も言っていなかった。
 
 
 
ホルヘが質問をするとすぐ、お付きの人に、「向こうへいくぞ」と命じて移動して行った。
 
すると、数名の制服警官がそれに続いた。
 
その内の一人に、「護衛ですか、大変ですね」とねぎらいの言葉を掛けたのだが、
 
「護衛じゃない」と忌々しそうな顔で返された。
 
さらにその警官は、「何か変なことしないように見張ってるんだ」と強調する。
 
どうやら、イカれた泡沫候補氏のお守を命じられたことが相当不満のようだった。
 
 
 
金曜の午後の天気予報で、大雪は日曜未明まで降ると伝えていた。
 
そうなると、日曜日に投票に行くのは雪の中を歩かねばならない。
 
年寄りには難儀なことだ。
 
滑って転んで骨折などもしかねない。
 
そこでホルヘは高齢の両親に連絡し、「今日中に、期日前投票したほうがいい」と薦めることにした。
 
ホルヘが両親と住む家は杉並区にある。
 
たまたま区内のある期日投票所の近くに行ったので、
 
そこで、家の近くの期日前投票所はどこにあるか訊くことにした。
 
単に質問するだけのつもりで入ったのだが、ホルヘはそこで投票を完了してしまった。
 
 
 
投票は、家に選挙人カード(?)が送られてきて、それを投票所に持って行き、
 
投票用紙と引き換えて行うのが普通だ。
 
したがって、期日前投票も選挙人カードが必要かと思っていた。
 
しかしカードがなくても、その場で氏名と住所、生年月日を書けば投票用紙を渡してくれる。
 
身分証明書も必要ない。
 
つまり、手ぶらで投票できるのだ。
 
アルゼンチンの日本大使館で衆議院議員選挙の在外投票の係員を経験したホルヘは、
 
この無防備さにすごく驚いた。
 
このシステムなら氏名、住所、生年月日さえ知っていれば、他人になりすまして期日前投票ができる。
 
パソコンでデータをチェックしているものの、それは、その住所に該当する選挙人がいるか、ということだけ。
 
身分証を示しての本人確認が行われない。
 
誰かがなりすませて先に投票すれば、本人が投票日に投票へ行っても、
 
「あなたはすでに投票されています」と言われることになるはずだ。
 
そうなった場合、どうするのだろう。
 
偽物の期日前投票は、投票箱に他の票と一緒に入っているので特定することはできない。
 
その疑問を、そこの責任者である都職員にぶつけると、「たしかにそうですね。上に伝えておきます」との返事。
 
今後は改正を望みたい。
 
 
 
期日前投票で気がついたことがもうひとつある。
 
杉並区の有権者は、区内のどこの期日前投票所でも投票できる。
 
これができるのに、なぜ他の区で投票できないのか。
 
東京都の選挙なのだから、杉並区民が千代田区で投票したっていいではないか。
 
投票日に投票へ行けず、なおかつ平日は夜遅くまで働いているサラリーマンは多い。
 
彼らが昼休みや仕事の合間に投票できるようにすれば、投票率は当然上がる。
 
 
 
開票後、各候補者の区市ごとの投票数が発表されるが、それはそれほど必要なのか。
 
こんなものは、候補者を応援した都議や区議、市議の働きを示す程度のもので、
 
一般の有権者には関係ないと思う。
 
どうしても必要なら、投票用紙に区名のスタンプを押すなど工夫し、
 
どこで投票しても杉並区民の票だとわかるようにすればいい。
 
区市ごとの集計は今より時間が掛かることになるが、別に急ぐこともなかろう。
 
本気で投票率を上げようと思うなら、これくらいの改革はすべきだと思う。
 
 
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About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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