参議院選挙の投票が21日に行われたが、アルゼンチンでは5日(金曜)から13日(土曜)までに在外投票が行われた。
在外投票は海外に住む日本人が国政選挙に投票するもので、日本の投票日の5日前までに終わらせることになっている。
日本に近いアジア諸国は5日前でも大丈夫だろうが、遠い国では余裕を持たせ、1週間以上前に終了となる。
投票用紙は日本まで運ばれ、そこから郵送で各自治体の選挙管理委員会へ送られる。
それが、日本の投票日に間に合わなければならないのだ。
 
 
在外投票の方法は非常に煩雑。投票できるのは、在外選挙人証を持っている人に限られる。
日本の最終居住地の選挙管理員会に申請し登録されると交付される。
投票にはこの選挙人証とパスポートなどの身分証明書が不可欠。
うっかり忘れると、会場に着いてもお帰りいただくしかない。
 
 
その二つを係員が確認後、投票者は投票用紙請求書と送付用封筒に記入する。
送付用封筒とは、日本に到着後に総務省から各地の選管へ郵送するための封筒。
選挙人証に記載されている選管の住所を転記するのだが、文字が小さいので高齢者は苦労する。
 
 
記入が住むと受付で投票用紙と内封筒、外封筒を受け取る。
投票の機密性を守るため、記入した投票用紙を内封筒に入れて封をし、さらにそれを外封筒に入れる。
外封筒には、氏名や署名、選挙人番号などを記載する。
それを受領係へもっていき、係員が記載ミスの有無をチェック。
問題がなければ立会人が外封筒に署名し、それを送付用封筒に入れて金庫へ納めてやっと終了。
 
 
てきぱきとした大使館職員などは別にし、一般の人はどんなに早くとも投票に15分はかかる。
今回、最も時間がかかったのは40分だった。
なぜそんなことを知っているかというと、ホルヘが大使館領事部から依頼されて係員を務めたからだ。
 
 
投票者の中には日本語の読み書きができない、あるいは日本語がわからないという人もいる。
そうした場合は代理投票というシステムがあり、「代理投票記載人」として選定された係員が投票者の支持する候補者や政党を記載し、「代理投票立会人」がそれを確認する。
不正投票や二重投票が行われないよう、これでもかといったほど制度化されているのだ。
 
 
投票開始の前日が準備日で、会場設定、ファイル作り、手順や規則の講義の受講、模擬投票などを行う。
ファイルには政党や候補者のリストが入れられており、投票者はこれを参考にする。
ファイル自体は毎回同じものを使っており、まずは前回選挙のリストをすべて外し、それから今回のものを差し込む。
ロスアンゼルスの在外選挙で前回のリストが使用されていたことがニュースになったが、それは十分あり得ることなのだ。
ロスの事件が発覚後、ただちに全リストを再チェックした。
 
 
ただそのリストというのは、選挙区でいえば候補者名、性別、年齢、所属政党を記しただけのもの。
写真もなければ政策も載っていない。
政党や候補者を熟知するにはネットなどで独自に調べるしかないのだが、高齢者がほとんどの一世にはそれも難しい。
そこで、比例だけ投票するという人も多い。
選挙区の候補者についてはわからないが、支持政党がある人はそれのみの投票にやってくる。
 
 
投票所は大使館の文化スペース内に設置した。
アルゼンチンを旅行で訪れ、パスポートを紛失した場合は大使館の領事部にお世話になることになるので、わかりやすい行き方を記しておく。
 

 
 
ブエノスアイレス市の目抜き通りヌエベ・デ・フリオ(9 de Julio)とコリエンテス大通りが交わったところに建っているのがランドマークのオベリスコ。
オベリスコが見つかれば、コリエンテス大通りもそこにある。
この大通りを番地の少ないほうへ進む。
オベリスコが1000番なので、900番の方を目指す。
あるいは、一方通行の大通りの自動車の進行方向へ進むと覚えてもいい。
 
 
そこから8ブロック(約800メートル)ほど進み、坂を下ってバスレーンのある大通りを渡りさらに1ブロック行くと、左側にレンガ色の建物がある。
これがルナパーク(LUNA PARK)という体育館。
ボクシングの殿堂だが、その他のスポーツやコンサート会場としても使われている。
コリエンテス大通りから見ると、このルナパークの左隣に建つ緑色をした約30階のビル内に日本大使館がある。
タクシーを利用するなら、行き先をルナパークと告げればいい。
 
 
領事部は15階だが、ビルの正面受付で身分証を提示しないと入れない。
パスポートを紛失し、さらにスペイン語も話せなければ、「ジャパン、ジャパン。ハポン、ハポン」などと受付で訴えれば、それと察して領事部へつないでくれるだろう。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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