アルゼンチンでの在外投票は、12月3日から6日までだったが、ホルヘら係員は2日から準備に取り掛かった。
 
その日の朝、食事をしながらニュースを見ていると、「コリエンテス大通りが閉鎖されました」との
 
コメントとその映像が流された。
 
デモ隊が車道をふさぎ、自動車が通れないようにしている。
 
アルゼンチン名物のピケ(道路封鎖)だ。
 
ほとんどが事前通告なしに行われ、警察も出張って来るがただ見ているだけで、道路交通法違反で検挙することはない。
 
抗議活動が報道で取り上げられるよう周囲に迷惑をかける、というのが彼らの戦術。
 
だから、どれほど周囲に迷惑をかけるかが重要なのだ。
 
コリエンテスはオフィス街へ通じる道。
 
アルゼンチンでは路線バスが主要交通手段なので、ここを通勤時間に閉鎖されたらたまらない。
 
日本大使館もこの道を下ったところにあるが、ホルヘは徒歩通勤なので影響は受けなかった。
 
 
 
投票会場となるのは多目的ホール。
 
ここの半分は図書室なので本棚があるが、まずは本が一切見えないように本棚を移動したり黒い布で棚ごと覆った。
 
これは、本の表紙やタイトルなどが投票に影響を与えるのを防ぐためだそうだ。
 
たとえば、「わかりやすい共産主義」などという本があると、投票者がそれに影響されるかもしれず、
 
また「暗に投票をリードしている」と突っ込まれかねない。
 
室内の目立つところに日本人形があったので、ホルヘは冗談半分で、
 
「女性候補への投票を促している、ということになりませんか」と領事に言うと、
 
「なるほど、その可能性もありますね」と撤去してしまった。
 
投票業務は非常に責任が重いとかで、関係する大使館員は細心の注意を払っていた。
 
 
 
この日は候補者および政党のリストを作ることにもなっていた。
 
しかし日本から届いたのは比例区のリストだけ。
 
立候補の届け出締め切りから数時間しか経っていないので、小選挙区の名簿はまだ日本で制作中だった。
 
そのため投票日当日の朝、大急ぎでリスト作りをすることになった。
 
北海道から九州、沖縄まですべての選挙区の名簿をファイルするのでかなり手間取った。
 
 
 
そんなこんなで無事に投票は終了したが、投票に来た人は非常に少なく寂しい限り。
 
一昨年の3割減ほどか。投票率は毎回下がっている。
 
以前、東ティモールに赴任していた人によると、そこでも在外投票は行われたそうだ。
 
日本人は100人程度しか住んでいないというので、2~30票しか集まらなかったのではないだろうか。
 
世界中のいくつの日本大使館や公館で在外投票が行われたか知らないが、どこでも投票率は極めて低いはずだ。
 
投票のため公館へ行かねばならないし、移住者にすれば消費税がいつ上がろうが関係なく、
 
候補者のこともほとんど知らない。
 
これでは投票の意欲など湧かない。しかし、どんなに投票が少なくても経費は掛かる。
 
 
 
在外投票に投入された経費を総投票数で割って1票当たりの金額を出すと、
 
日本で投票された1票の金額を相当上回ると思う。
 
もし、日本のそれは1票1,000円で、海外の1票は5,000円だということになれば、
 
「税金の使い方が不公平である」ということで、これまた1票の格差問題に発展するかもしれない。
 
はてさて、先細りの在外投票は今後どうなるのだろうか。
 
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About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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