アルゼンチン大統領選挙の決選投票が22日に行われ、
与党候補のマウリシオ・マクリが、クリスティーナ・フェルナンデス大統領の後継者である
与党候補ダニエル・シオリを破った。
得票比率は51.40%対48.60%だった。
他の候補者も加わった第1回目の投票では、シオリが1位でマクリが約2.5ポイント差の2位。
決選投票では3位以下の候補の票がほとんどマクリに流れると思っていたが、そうでもなかった。
背水の陣のシオリが行った反マクリキャンペーンの効果があったのだろう。
マクリが嫌いな人はたくさんいるが、ホルヘの知り合いの多くは、
たとえ彼が嫌いでも今回はマクリを支持していた。
このまま行けば国が潰れる、といった危機感が、まともな人たちの中にはあるからだ。
現政権は弱者の味方ということで、補助金や生活保護費をばら撒いている。
これにより働かなくとも生活できる人が急増し、働くより働かない方がいい、ということになってしまった。
ホルヘのゴルフ仲間に、自動車修理工場を経営している日系人がいる。
現在は閉鎖してしまったが、以前プレーしていたゴルフ場の周囲には貧困世帯が多く、
そこの若者がキャディとして働いていた。
その中の1人は特に目を掛けられ、我々が他のゴルフ場でプレーするようになってからも、キャディに呼ばれていた。
そうした関係だったので、修理工場の社長は、仕事が忙しいときに彼をバイトで使っていた。
気さくな人柄だし仕事も熱心。
そこである日、「来月から、正社員にしてやる」と告げた。
すると、翌日から来なくなった。
彼は、両親と3~4人の兄弟と嫁さんと子どもと暮らしている。
みんなが補助金をもらっており、たまにバイトの収入があればそれで充分なのだ。
正社員で登録されると補助金が打ち切られるので、それが嫌で姿を消した。
家族構成にもよるが、働かない方が有利になるケースというのは、本当にあるらしい。
補助金のばら撒きでバカを見ているのは、まともに働いて税金を納めている人々。
だから基本的に反マクリでも、彼に入れることとなる。
ボカの元会長として辣腕を振るったマクリ。
現在でも関係は深く、投票日にはアルアバレーナ監督らと一緒にサッカーに興じていた。
パフォーマンスにせよ、投票日にサッカーとは思い切ったことをするものだ。
当選の翌日の会見では、早速意地悪な質問が飛んだ。
それは、クラブW杯でリーベルを応援するか、というもの。
アルゼンチンの大統領となったからには、アルゼンチンのチームを応援すべきだというのだ。
これに対しマクリは、
「リーベルが優勝したら、それにふさわしい出迎えをする。
でも、私にリーベルを応援しろというのは無理だ」
と、ボカファンとしての姿勢を崩さなかった。