弱い世代といわれながら、見事にアジア王者となったU-23日本代表。
他の世代と比較して強いか弱いかはともかく、このチームは歴代にはなかったものを持っている。
それは、決定力の高さだ。
日本代表は、常に決定力不足が指摘されていた。
ゲームを支配しながらもゴールを奪えず、格下相手に引き分けたり敗れることが多かった。
しかし今大会は違った。決勝の韓国戦など、それの最たるものだった。
しかしその一方、ホルヘが勝手に「日本サッカーの課題」と思っている点については、相変わらずだった。
昨年末、「パンチせよ」というコラムを書いた。
日本のGKはキャッチを第一に考えるため、取り損なってゴール前にボールをこぼすことが多い。
もっとパンチングをすべきだ、という趣旨だった。
イラク戦の失点は、またもGKのポロによるものだった。
原川の決勝点もイラクGKが弾いたボールによるものだが、これはちゃんとしたパンチングであり、
危険地帯であるゴール前にボールをこぼすポロとは違う。
パンチしたボールがドンピシャで原川に行ってしまったのは、イラクにとっては不幸だった。
あのシーン、GK櫛引は、手のひらで2度弾いた。
このときに、もし上へ弾いていれば状況は変わっていただろう。
普通、シュートを真上へ弾けば、ボールの勢いという慣性により、ゴールラインを割ってCKとなる。
弱いシュートを真上に弾けば、ボールはそのまま上に上がり、GKは落ち着いてそれをキャッチすることができる。
櫛引限らず日本のGKは、キャッチ至上主義で育っているので、パンチングの決断や技術において、
まだ世界との差があると思う。
もちろん、キャッチングについては申し分ない。
これにパンチング能力が加われば、鬼に金棒ではないか。
ホルヘは以前、スポーツメーカーからの依頼で、GKを集中的に撮っていたことがある。
メーカーのマークはGKグローブの甲と指に入っていることが多い。
このマークをきっちりと入れた写真を撮るのだ。
そこで気づいたのは、外国人GKは、手をグーにして構えることが多いということ。
普段はパーでも、クロスが来そうになるとグーに変える選手もいた。
グーにするのは、パンチングに備えてのことだ。
つまり、キャッチ至上主義でなく、パンチ至上主義なのだ。
グーにされると、グローブの指に描かれたメーカーのマークが隠れてしまい、撮影に苦労した記憶がある。
前述の「パンチせよ」にも書いたが、プレー中、キャッチングからパンチングに切り替えるよりも、
その逆の方が危険は少ない。
中学生年代、高校生年代のGK指導者は、日本サッカーの未来のために、もっとパンチングの練習を取り入れてほしい。