清原の逮捕で少し不思議に思ったのは、彼がやせていないことだ。
 
名球会ゲームなど最近の映像を見ても、お腹はポッコリだし、頬もこけていない。
 
田代まさしが二度目に逮捕されたときなどは、ゲッソリとやつれていて、
 
典型的なシャブ中といった感じだった。
 
 
 
覚せい剤が主婦など一般女性にも広まったのは、
 
売人が「痩せる薬だ」といって営業(?)したからだそうだ。
 
痩せたい女性たちがこれに飛びつき、やがて中毒になっていった。
 
 
 
ホルヘは身長167センチで体重は60キログラム弱だが、お腹は出ている。
 
ガッチリ体型ならお腹が出ていても、「貫禄がある」ということになるが、
 
痩せ型のそれはどうもいけない。
 
 
 
数年前、アルゼンチンで知人のジム経営者にこの件を相談した。
 
すると、「この店に行ってみろ」と、ある場所を教えてくれた。
 
そこはプロテインやサプリメントなどを扱っている店だった。
 
店主に、「お腹を引っ込めたい」というと、「じゃあ、これを飲め」と、
 
小さな瓶を出した。瓶には、「エフェドリン」と書いてある。
 
 
 
エフェドリンとは喘息の薬などに使われる劇薬で、覚せい剤の原料にもなる。
 
日本では相当規制の激しい薬なのに、街のサプリメント屋で手軽に扱われていることに驚いた。
 
いろいろ質問すると、エフェドリンを使用すると身体のエネルギー消費が高まり、
 
脂肪が燃焼しやすくなるそうだ。
 
ドーピングについて甘かった当時のボディビル界では、大会前に絞り込むため、
 
ボディビルダーがよく使っていたという。
 
 
 
覚せい剤を使って痩せるのは、単に食欲がなくなるからだと思っていたが、
 
脂肪を燃やすという効果もあるらしい。
 
なのに、なぜ清原は痩せなかったのだろうか。
 
 
 
もう、20年も前になるが、エクアドルでコカインの売人をしているコロンビア人と仲良くなった。
 
行きつけのバーのカウンターで隣り合わせたのがきっかけだった。
 
彼は風邪をひいているようで、常に鼻をシュンシュンさせている。
 
そのときは一般人だと思っていたが、彼がトイレに行ったとき、「これをやりにいったんだ」と、
 
マスターがコカインを吸引するゼスチャーをした。
 
そして、「あいつはコカインの売人だ。欲しければ売ってくれるよ」と教えてくれた。
 
鼻がシュンシュンしていたのは、風邪ではなくてコカインの吸い過ぎだったのだ。
 
 
 
ホルヘは薬物の使用には興味がない。酒だけで充分だ。
 
しかしジャーナリスト(?)として、コカイン情報には関心があった。
 
面白いネタをつかめば、どこかに売れるかもしれない。
 
そんな下心もあり、彼と仲良くなった。
 
彼も、ホルヘが初めて知り合いになった日本人なので、いろいろと興味があったようだ。
 
 
 
「日本で流行っている麻薬は何だ。コカインか、ヘロインか」と訊いてきた。
 
日本では覚せい剤がナンバーワンだが、覚せい剤のスペイン語がわからない。
 
そこで、「アメリカではアイスとも呼ばれる」「眠気が吹っ飛ぶ」
 
「結晶で、それを水に溶いて注射する」などと説明すると、
 
「ああ、コカイナ・キミカ(化学コカイン)か」と納得した。
 
そして、「あれは身体に悪い。やったらダメだぞ」とホルヘに忠告。
 
「化学薬品が原料だから、効き目は強くても身体に毒だ」と覚せい剤を否定し、
 
「その点コカインは、植物であるコカの葉が原料だ。ナチュラルなんだ」と力説していた。
 
 
 
しかしその彼も、翌年にはガリガリになったうえ言動がおかしくなり、
 
その次の年には、廃人寸前の状態で刑務所にぶち込まれた。
 
ナチュラルでもケミカルでも、麻薬は身体に悪い。
 
痩せたかったら、運動しましょう。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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