安倍総理がアルゼンチンにやってきた。
2013年にもブエノスアイレスで開催されたIOC総会に、東京五輪招致の応援団として出席したが、日本の総理大臣としての公式訪問は57年振りのこと。
21日の昼からマクリ大統領と午餐と会談をするというので、ひょっとしたら撮影できるかもしれないと思い、カメラを担いで出かけた。
 
 
会談が行われるのは大統領府。
ここはカサ・ロサーダ(ピンクハウス)と呼ばれており、その名の通り外装はピンク色になっている。
大昔アルゼンチンでは、ブランコ党(白党)とコロラド党(赤党)の二大政党が激しく対立していた。
赤党といっても共産主義や左派でなく、小学校の運動会の白組と赤組のように、識別のための色分けにすぎない。
その両党の対立を鎮め、挙国一致するためのシンボルとして、白と赤を混ぜたピンク色に塗装したそうだ。
 
 
大統領府は鉄策で囲われており、一般人はその中へ入れない。
しかし運が良ければ、自動車から降りてくる総理を望遠レンズで捉えられるかもしれない。
敷地内に日の丸がはためいていたのでそちらのほうに行くと、鉄策沿いに現地のテレビクルーを発見。
その位置からだと、車寄せと玄関が見渡せる。
そこでホルヘもここを撮影位置とした。
 
 
それに気づいたテレビクルーが、「日本の大統領が来るんだろ」と話しかけてきた。「いや、総理大臣だ。日本に大統領はいない」と答える。
世界には、日本のように大統領制のない国が少なくない。
しかし大統領制の国の人々には、このシステムがピンとこないようだ。
国のトップは大統領というのが常識になっている。
「そのかわり、天皇陛下がいる。もっとも天皇は政治にはタッチしない」と説明しても、「政治にタッチしないなら国のトップではない。ならば国のトップは総理大臣なのだから、やはり大統領だろう」などと話がややこしくなる。
 
 
やがて総理一行が到着したが、その車列の長いこと。
「随行1」「随行2」や「報道1」「報道2」などの表示のあるミニバスが何台も続き、その陰になって総理が車から降りるところは全く見えなかった。
ということで、撮影ならず。
 
 
日本の総理大臣の最後の公式訪問は、57年前の岸信介。
安倍総理の祖父である。
数年前、たしか当時の総理がブラジルとチリを訪問したが、隣国のアルゼンチンは無視された。
ようするにアルゼンチンは、日本にとって重要な国でないということだ。
なんでも対日貿易における順位は55位だそうで、日本の商社の現地法人もどんどん縮小している。
そんな中、なぜ今回の訪問となったのだろうか。
 
 
安倍総理はまず次期アメリカ大統領のトランプと会談し、その後ペルーで開かれたAPECの会議に参加した。
そのついでにどこか中南米の国に寄ろうということだったのだろうが、果たして当初からアルゼンチンを予定していたのか。
実はアルゼンチンのマクリ大統領は、実業界時代からトランプと親交があり、当選後すぐに電話会談も行っている。
日本はこれまでのトランプの言動に戦々恐々としており、藁をもつかむ思いでマクリへの接近を図ったのかもしれない。
もしそうなら、今後日本政府はもっとアルゼンチンへ目を向けてくれるだろう。
 
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About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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