ブラジルのサッカーチーム、シャコペエンセを乗せた飛行機の墜落事故。
チームは、南米王者を決めるコパ・スダメリカーナ決勝第1戦に向かう途中だった。
シャコペエンセは国際的にはほとんど無名で、創立も1973年という若いクラブ。
サンタカタリーナ州のシャペコーという人口20万人ほどの町を本拠地としている。
78,79年は全国選手権に出場したがその後降格し、一昨年、35年振りの復帰を果たした。
その後は目を見張るような躍進で、南米王者にあと一歩と迫ったところでの悲劇だった。
 
 
監督はJリーグで神戸を指揮したカイオ・ジュニオール。
彼は決勝進出を決めた直後、「私のサッカー人生で最高の瞬間。今日死ねたら幸せだ」と喜びを語っていたが、今となっては悪い喩えだった。
飛行機には選手、スタッフの他、クラブ関係者と20名の報道陣が搭乗していた。
監督の息子マテウスも同行する予定だったが、パスポートを忘れたことで九死に一生を得た。
 
 
墜落機はイギリスのエアロスペース社製の146型で1999年に製造されている。
目的地のメデジン空港まで約50キロメートルの山岳地にあるウニオン村に墜落し、機体は大きく3つに割れた。
事故原因は、電気系統の故障か燃料切れが有力とされている。
ブラックボックスはすでに回収されているので、まもなく判明するだろう。
 
 
運航していたのは、ボリビアのチャーター専門会社のLAMIA。
保有機は3機という小さな会社で、事故当時に運航可能だったのはこの1機のみ。
残りの2機は長期間修理工場に入っている。
つまり、実質は1機しかない怪しげな会社とも思えるが、サッカークラブの顧客は多かった。
シャコペエンセはジュニオール(コロンビア)戦でも利用しているし、今回の決勝の相手でコパ・リベルタドーレス王者のナシオナルも5回乗っている。
さらに11月10日のW杯予選ブラジル対アルゼンチンでは、アルゼンチン代表がこの飛行機でベロ・オリゾンテに乗り込んでいる。
 
 
近年、サッカーチームの移動はチャーター機が主流となっている。
通常のフライトを利用すると時間のロスが多いが、チャーターならば、アウェイのナイトゲームを終えて、そのまま帰国できる。
ホテルに泊まる必要もない。
こうした事情から、サッカーチームはチャーター機業界の有力な市場なのだ。
そしてLAMIA社は独自のサービスとして、機体にチームのエンブレムや「がんばれ、シャコペエンセ」といったメッセージをマスキングしている。
敵地に乗り込むのに、機体にチーム名やエンブレムが入っていれば気分が高まる。
小規模ながら、LAMIA社は南米サッカー界の中ではそれなりの地位を築いていた。
 
 
決勝戦が行われるはずだった11月30日、ナシオナルのスタジアムとシャコペエンセのスタジアムで、同時刻に追悼式が行われた。
ナシオナルのサポーターは「シャコペエンセ」の大合唱で哀悼の意を表し、出席していたブラジルの官房長官の涙を誘った。
しかし、今後は一体どうなるのか。
決勝戦を延期しても、シャコペエンセは選手がいない。
2軍とユースで戦わせるのは酷というもの。
アルゼンチンのクラブなどは、クラブ再建のために所属選手をシャコペエンセに移籍させるという協力体制を打ち出しているが、それは決勝戦のためというより、今後を見据えてのことだ。
 
 
一方、対戦相手のナシオナルは、「タイトルをシャコペエンセに捧げたい」と、決勝戦を行わずにシャコペエンセの優勝という措置を取るようCONMEBOLに申し出ている。
現実問題として、決勝戦を行うのは非常に困難。
したがってナシオナルの案か両クラブ優勝ということになりそうだ。
 
 
実はホルヘ、クラブW杯の取材でメデジンに行こうと思っていた。
ところが、その仕事が頓挫してしまった。
これまでの例からいうと、コパ・リベルタドーレスで優勝したクラブは売り時とばかり主力を手放すので、その後戦力が落ちることが多い。
しかしナシオナルは、下半期の南米チャンピオンを決めるコパ・スダメリカーナでも決勝に進出。
同じ年に、この両大会を制したクラブはない。
注目はFWのボルハ。
爆発的なスピードが武器で、コパ・スダメリカーナ準々決勝のコリチバ戦では、アウェイでハットトリックを達成している。
日本の寒さに負けず彼が火を噴けば、ナシオナルの優勝もありうる。
 
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※写真はナシオナルです。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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