9月26日。清瀬内山グラウンドC。T3リーグBブロック第6節。
都立東大和南高校対東京高校。
キックオフ直後から大雨が降り始めたゲームは大熱戦。
東京が先制し、都立東大和南が逆転したものの、東京が追い付くと、残り10分で訪れたのは東京の決定機。左サイドから藤村拓が上げたクロスに宮下創太が頭から飛び込みます。
「『ああ、来ちゃった』と(笑)でも、足よりも頭の方が自信があったので、当てるだけでした」という宮下のダイビングヘッドは降りしきる雨粒を切り裂いて、ゴールネットへ突き刺さります。
一直線に宮下が向かったのは、傘も差さずに声援を送り続けていた応援団の元。
結局そのあとも1点を追加して、選手権予選でベスト8まで勝ち残っている都立東大和南を4-2と撃破した東京。
このゲームをモノにした裏には、「いつもは外してばっかりなので良かったです」と笑った宮下を筆頭に、選手権予選後もチームのことを考えて現役続行を決断した3年生の存在がありました。
 
 
300近いチームが出場する高校選手権東京予選。
選手権と言うと“お正月”を大半の方はイメージすると思いますが、そこまで辿り着くことができるのはほんの一握りの選手たちだけ。
とりわけ東京の高校生たちは、蝉の鳴く頃に選手権予選の敗退を突き付けられ、高校サッカーに別れを告げるケースがほとんどなのです。
東京高校も「目標は選手権予選で都大会に出ようと。昔はずっと出ていたんですけど、4地区も強いチームばかりになりましたので、まずはそこが目標で、7月の合宿、8月の仙台遠征を経てそれに臨むんですけどね」と長根正俊監督が話したように、チームを強化して真夏の選手権予選に挑んだものの、残念ながら1次予選の2回戦でPK負け。
8月18日に3年生の選手権は終わってしまいます。
 
 
ただ、彼らにはまだ公式戦が残されていました。
それが東京の2種年代がしのぎを削っているリーグ戦の“Tリーグ”
「『Tリーグの最終戦まで3年生はやっていこう』ということで春からスタートしたんですけど、3年生も自分の進路というものがあるので、僕らも『絶対にやれ』ということは言えない訳ですよ。そこは途中の段階で『勉強する子はしていい』と。ただ、推薦とかそういう成績を持っていて、大学に行ける子には『手伝えるんだったら手伝ってくれ』と話していました」とは長根監督。
まだ、その時点で残されていたリーグ戦の試合は4試合。
そこまで2勝1分け2敗という好結果が残っていたことも後押しになったようで、「新人戦、インターハイ、選手権と全然良い結果が残せなくて、このまま引退するのは本当に悔いが残るので、Tリーグで去年一昨年にないぐらい結果が出ているんですよ。それでみんな今は凄くやる気になっていて、行ける所まで行ってやろうと思って頑張っています」と宮下。
10人近い3年生が現役続行を決意し、残されたリーグ戦を戦い抜くことになりました。
 
 
ただ、試合の日程は9月22日、9月26日、10月9日、11月16日となっており、9月の連戦が終わると、1ヶ月に1試合だけというスケジュールが続きます。
22日の私立武蔵戦は2-2で引き分け、前述した都立東大和南戦は4-2で勝利。
各チームによって消化試合数にバラつきはあるものの、2試合を残して少し昇格という目標は難しくなってきた感もあります。
それでも「自分たちにできることはTリーグしかないので、『後輩のためにも今までにない結果を残そう』と話していて、正直練習は気持ち的にキツい時もあるんですけど、そこはみんなで1つになって頑張っています。僕たちに今できることはサッカーなので、あと2試合はみんなで最後までやり切ろうと思っています」と宮下。
きっと残り少なくなりつつある高校生活も意識しながら、彼ら3年生は練習へ励んでいることでしょう。
選手権予選が終わってもリーグ戦という戦いの場があるということは、何とも幸福なことですね。
残された180分間で、ぜひ東京高校の3年生には忘れがたい思い出を作って欲しいなと思っています。
 
DSC_1109