高速道路料金所のETCは、アルゼンチンの方が日本より相当早く設置された。
ホルヘのアミーゴである日系1世によると、日本から来た親戚を乗せてETCを通ったら、
「なんで、料金を払わないんだ」と訊かれ、
「俺は有名だから、顔パスなんだ」と応えたら、本気にして驚いていたという。
そのアミーゴにすれば、先進国の日本がアルゼンチンより遅れていることのほうが驚きだった。
もっともこれは技術的問題ではなく、役所の許認可とか、
道路公団が人件費を削減しようとしなかったことなどが要因といえる。
支払いがスムースなETCは緑、現金払いはオレンジで表示されているが、アルゼンチンでもまだETCは少数派。
したがって、ラッシュ時にはその手前では渋滞が起こる。
すると、ドライバーたちが次々とクラクションを鳴らすのだ。。
料金所でつかえているのだから、鳴らしたって仕方ないと思いきや、これは料金所に対し、
「ゲートを開けてタダで通せ」という催促。
真偽は不明ながら、自動車の列が何メートル以上になったら、あるいは待ち時間が何分以上になったら、
無料で通して渋滞を解消するという規則になっているという。
ホルヘも、一度経験した。
長い列に並んでいたら突然ゲートが開きっぱなしになり、車がスイスイ通過するようになった。
「噂は本当だったんだ」と感激したものの、1台前で再びゲートが閉まり、しっかり料金を取られた。
アルゼンチンは国土が広いせいか、高架式でない高速道路が多い。
そういう道を走っていると、カーナビから「まもなく危険地帯です」というメッセージが流れてくることがある。
これは、スラムが近いという警告。空き地に勝手に家を建てて住み着いたスラムが高速道路の脇には多く、
そこの子どもや麻薬中毒者が遊び感覚で、走行中の車に石を投げたり、ときには発砲することもあるからだ。
ブエノスアイレス市内の鉄道ターミナルであるレティーロ駅の裏には、ビジャ31という広大なスラムがあり、
その一部は高速料金所の近くまで伸びている。
そしてここで渋滞になると、危険度はさらにアップする。
スラムからピストルを持った男たちが入ってきて強盗を行うのだ。
被害者は、とんでもなく高い通行料を払わされることになる。