“やれないこと”と“やれること” 土屋 雅史 2014年1月10日 土屋雅史, 日本サッカー いよいよ国立での準決勝を目前に控えている高校選手権。 全国4166校の内、既に4162校が敗退していった訳ですが、 その中には国立まであと1勝へ迫ったものの、 惜しくも涙を呑んだチームもあります。 東京都A代表、修徳高校。 今まで全国の舞台ではベスト16が最高だった同校は、 2回戦からの登場となった初戦の綾羽戦に1-0で競り勝つと、 同校記録に並んだベスト16の松商学園戦では、 相手に7倍近いシュートを浴びせて3-0で完勝。 新たな歴史の扉を開いて迎えた準々決勝では 昨年度の選手権でも国立のピッチに立っている星稜を向こうに回し、 持ち味の“堅守速攻”を存分に生かして、攻撃的な姿勢で大健闘。 最後はPK戦で敗れたものの、 その戦いぶりは多くの方の称賛を浴びることとなりました。 印象的だったのは、確か3回戦の前だったと思いますが、 ある東京の学校の監督さんとお会いした際に 「修徳だったら、今のウチの新チームでも勝てそうなんだけどなあ」と おっしゃっていたこと。 きっとそう思いながら修徳のゲームを見ていた指導者の方は 決して少なくないかもしれません。 ただ、特に東京において最後に勝っているのは修徳なんですねえ。 では、果たして彼らの何が他のチームを上回っているのか。 それは“やれないこと”を自分たちでしっかり把握している部分だと思います。 岩本慎二郎監督が「ウチは攻撃3、守備7でやっている時が一番持ち味が出る」と 話しているように、基本的には劣勢からのカウンターというのが 修徳における最大の特徴であるのは間違いありません。 実際に都大会決勝では成立学園にボールを持たれながら、 カウンター2発で2点を先制する、理想的な展開に持ち込んでいます。 結果として4-3というとんでもない打ち合いになっちゃいましたが(笑) 例えば彼らが繋げそうなボールでもクリアを優先することに対して、 「判断がない」と簡単に口にする人の話も聞きました。 ただ、彼らは「クリアをする」というチョイスと「パスを繋ぐ」というチョイスの中で 前者を選ぶ確率が高いだけであり、それも立派な判断です。 それは「判断を放棄する」のとは違いますよね。 そんな彼らの“判断”に関して、面白い試合がありました。 それは3回戦の松商学園戦。 前述したように3-0というスコアもそうですし、 シュート数も22対3という一方的な展開だった試合で、 修徳の選手たちの判断は試合が進むにつれ、 「クリアをする」ことより「パスを繋ぐ」ことに比重が置かれていったのです。 つまり全国の、しかもベスト8を懸けて戦うような大舞台で 彼らはしっかりと自分たちで展開を“判断”し、 ポゼッションサッカーで結果を出して見せたのです。 試合後、キャプテンの池田晃輔に話を聞くと、 「修徳がボールを持つ試合もそんなにないと思うんですけど」と 笑っていましたが、その話す姿からは小さくない充実感と 短期間で成長した者が纏うオーラのようなもの感じたのを覚えています。 全国で“やれなかったはずのこと”が“やれること”に 変わっていった様は痛快ですらありました。 最後はPK戦での敗退となったものの、 大会3試合で許した失点はゼロ。 松商学園戦でのポゼッションサッカーも含め、 改めて彼らからは全国大会という最高のステージで 色々なことを勉強させてもらいました。 修徳イレブンに大きな感謝と拍手を送りたいと思います。 写真は松商学園と修徳が対峙した駒沢陸上です。 Tweet