この時期になると日本のサッカーカレンダーは
 
どのカテゴリーも年末に向けてシーズンの終了が近付きつつあり、
 
1試合1試合の重要度が今までにも増して高くなっています。
 
特に高校サッカーは各地区予選もここから大詰めに。
 
3年生は高校生活のすべてを懸けて“センシュケン”に臨んでおり、
 
取材する側も胸が苦しくなるようなゲームが続いている中、
 
先週末は東京予選の準々決勝を取材に行ってきました。
 
 
 
幸いなことに東京の高校サッカーを長く取材させてもらっている中で
 
各校の監督の方とも色々とお話をさせて頂く機会も多く、
 
特に対戦する両チームが何度もゲームに伺ったチームだった場合、
 
選手や監督から試合後にコメントを戴いてきた身としては、
 
どちらにも勝って欲しい、どちらにも負けて欲しくない、
 
という複雑な感情を抑え込みながら毎試合の取材と向き合っている訳です。
 
 
 
今シーズンのインターハイを制し、優勝候補筆頭として選手権予選に挑んでいた駒澤大学高。
 
土のグラウンドという環境の中で日々研鑽を積み、7年ぶりの全国を狙う都立三鷹。
 
この両校の対戦が、赴いた会場の第2試合。
 
好ゲームを期待しつつ、フラットな気持ちでキックオフの笛を聞きました。
 
 
 
試合は都立三鷹が開始11分で先制。
 
ただ、以降は駒澤大学高が押し込む時間が続きます。
 
都立三鷹のCBには1週間前のゲーム終了後に話を聞いていました。
 
すると、肋骨にヒビが入っているにもかかわらず痛み止めを飲みながら試合に出ているとのこと。
 
そんなCBが相手の猛攻を懸命に跳ね返し続けます。
 
駒澤大学高のストライカーにも1週間前のゲーム終了後に話を聞いていました。
 
今シーズンのリーグ戦では17試合で25得点ととんでもないペースでゴールを量産。
 
それでも、なかなかトーナメント戦では決定的な仕事ができていないとのことで、
 
「自分が点を取れればチームも凄く盛り上がって
 
勢いも付くと思うので、しっかり自分で決めたい」とキッパリ。
 
そんなストライカーが何とか堅陣をこじ開けようと最前線で奮闘します。
 
 
 
ゲームは0-1のままで推移。
 
押し込む駒澤。凌ぐ三鷹。
 
見ている方まで息が詰まるような重苦しいゲームは、
 
最少スコアのままで後半アディショナルタイムを迎えます。
 
 
 
三鷹にはここ2年続いていた呪縛がありました。
 
それは、「後半アディショナルタイムの失点」。
 
選手権予選では昨年も一昨年も後半のアディショナルタイムに失点を喫し、
 
昨年はそのまま敗退を余儀なくされ、一昨年は延長の末にやはり敗退。
 
今の3年生は2年間に渡って、先輩たちの悔しい想いを目の前で見てきた世代でした。
 
 
 
アディショナルタイムも4分を経過した頃。
 
駒澤にFKのチャンスが訪れます。
 
キッカーは都内屈指のキック精度を誇るMF。
 
おそらくは三鷹を取り巻くすべての人が
 
思い浮かんだここ2年の光景を振り払ったことでしょう。
 
 
 
FK。
 
ボールは誰にも当たらず、ワンバウンドしてそのままゴールに吸い込まれます。
 
今年も、また…
 
直後、長いホイッスルを響かせた主審が上げた右手。
 
同様に右手を握ったフラッグと共に上げていたのは副審。
 
オフサイド。
 
同点ゴールは認められず、程なくして迎えたタイムアップ。
 
懸命に1点を守り抜いた三鷹が準決勝から使用される東京高校サッカーの聖地・西が丘へと
 
勝ち進む結果となりました。
 
 
 
ピッチ上に残酷なコントラストが描かれる中、
 
三鷹ベンチにいた2人のマネージャーが泣いていました。
 
おそらく3年生なんでしょう。
 
相手は優勝候補筆頭。
 
選手を信じたい気持ちはもちろんあるけれど、
 
あるいは今日で高校サッカーが終わることも
 
覚悟しながら会場へと向かってきたかもしれません。
 
そんな2人の涙を見ていると、こちらまでもらい泣きしそうになってしまいました。
 
 
 
敗者の記憶と勝者の記憶が重なり、それでも容赦なく先へと進んでいく最後の大会。
 
脚色の必要などない無数のドラマを経て、今年も選手権の季節がやってきています。
 
 
DSC_0531
 
写真は駒澤大学高×都立三鷹の一コマです!