ホルヘはまったく興味ないのだが、世の中には自動車好きな人が多い。
そして、こうしたマニアのための自動車雑誌やテレビ番組がある。
イギリスのBBC放送では「トップギア」という番組を放映していて、なかなかの人気らしい。
ところがその番組がアルゼンチンでロケを行って物議をかもした。
自動車番組なので、主役は自動車。
ロータス、ポルシェ、ムスタングの3台が、アルゼンチン最南端のウシュアイアを疾走するという内容。
そういえば、最近は「マスタング」というのが正しいらしいが、
長年耳にしていたムスタングのほうが落ち着くので、そう書く。
3台のスポーツカーはいずれもニューモデルではなく、約30年前のもの。
なぜ、こんな中途半端な中古車を使うのか。
この3台はチリから陸路でウシュアイアへ入ってきた。
ナンバープレートはイギリスのものが付いている。
そしてロータスのナンバーは、「H982FLD」となっていた。
FLDとはフォークランドのナンバー。
フォークランドはスペイン語でマルビーナスといい、
イギリスとアルゼンチンで領土権を争い、戦争にまでなった諸島だ。
国際的にはイギリス領土だが、アルゼンチンはそれを認めていない。
そしてこの諸島は、ウシュアイアから目と鼻の先にある。
世にいうフォークランド戦争(紛争)が起こったのは1982年のこと。
ロータスのナンバーH982FLDはまさにそれを思い起こさせる。
ポルシェとムスタングのナンバーは、両国の戦死者数に結びつくものだった。
約30年落ちの自動車というのも、戦後32年とぴったり当てはまる。
これに気づいた地元民は激怒し、投石でロータスのウィンドーを破壊。
州知事も事態を重く見て、撮影スタッフへ州外退去を要請した。
これは命令でなく要請だが、BBC側はこれを素直に受け入れたうえ、謝罪のコメントを残して帰途についた。
BBCといえばイギリスの公共放送。今回はやりすぎで失敗したが、
自動車番組の姿を借りてフォークランド問題をパロディにするとは、なかなかの思いつきだ。
日本の公共放送NHKにも、是非がんばってもらいたい。