土曜日、左の下腹部にズキンとした痛みが走った。
 
どうやら、また石らしい。
 
ホルヘは体質的に尿酸値が高く、しばしば尿路結石になる。
 
腎臓の中に石ができるのだが、そのほとんどは知らないうちに尿と一緒に出ているはずだ。
 
「はずだ」というのは、確認できることが滅多にないからだ。
 
 
 
初めて石ができたのは、20歳ころだった。
 
尿が黒くなり、左の背中が痛くなった。
 
心配になり、近くの診療所にいった。
 
レントゲンもない小さなところだったが、医師はホルヘの状態を聞き、「尿路結石だろう」と診断を下した。
 
今思えば、典型的な症状だったといえる。
 
 
 
当時の医者は乱暴なもので、「ビールを飲んで飛び跳ねていれば、自然に出ることがあるからやってみろ」という。
 
ビールは利尿効果があり、それにジャンプによる衝撃を加えることで石を膀胱へ落ちるという作戦だ。
 
酒飲んで飛び跳ねるというのは、ディスコで踊っているようなものだ。
 
何と素敵な治療法だと喜び、早速やってみた。
 
すると、1時間もしないうちに石が出た。
 
 
 
それから約3か月後、今度は痛みや血尿といった何の前触れもなく、尿をしていたらカチーンと石が便器に当たった。
 
実家の男性小用の便器だったので、素早くつまんで捕獲に成功。
 
3か月間で2回も出るのは異常だと思い、石を持って大きな病院へ行った。
 
そこで分析してもらったところ、典型的な尿酸による石とのことだった。
 
 
 
それ以来、何度となく結石を経験している。
 
尿路結石は激痛を伴うとよく聞くが、幸いなことにホルヘの場合は大して痛くない。
 
そして痛みを感じると、「また石だ」ということで水分をたくさん摂取すると、いつの間にか痛みは消えている。
 
つまり、尿とともに出ていったのだ。
 
少し痛みが強いときは、ビール&ジャンプ作戦で対抗する。
 
初めてのときこれで成功したので、絶対の信頼を置いている。
 
 
 
今回はまず水をガブ飲みしてみたが、鼠蹊部のあたりまでは落ちてきたものの、そこから動かない。
 
これはビールでなきゃダメと判断し、隣のスーパーへ買いに行った。
 
すると、すでに午後8時を過ぎていたため、アルコール類が販売できなくなっていた。
 
翌日の日曜日は選挙の投票日。
 
法律により、前日の午後8時から投票日の夜まではアルコールの販売が禁止となるのだ。
 
飲食店も同様で、種類の提供はできなくなる。
 
翌日が投票日とは知っていたが、晩酌用のワインとウィスキーは常備していたので、
 
販売規制のことをすっかり忘れていた。
 
 
 
やむなく日曜もウォーター&ジャンプを終日続けたが、一向に落ちていかない。
 
しかしヤケクソになって酔っ払い、就寝前にウーロン茶を1リットルほど飲んだら、
 
目が覚めたとき痛みはなくなっていた。
 
 
 
できれば尿と一緒に出る石を捕獲したいのだが、どうすればいいだろうか。
 
茶漉しで漉しながら排尿するか、一度ペットボトルなどに出すなどの案を考えてはいるが、
 
なんか間抜けだし汚いので、未だに実行したことはない。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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