ボカ対リーベルのスーペルクラシコでスキャンダルが発生した。
 
試合はコパ・リベルタドーレスのトーナメント1回戦の第2試合。
 
初戦はリーベルがホームで1-0の勝利を飾っていた。
 
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前半を0-0で終え、気合十分のボカの選手は早々とピッチに立っていた。
 
すると、リーベルが出てくる仮設トンネルのあたりが騒々しくなった。
 
このトンネルは、ファンが選手に物を投げたり唾をかけるのを防ぐためのもので、
 
送風機のエアーによって瞬時に設置できる。
 
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リーベルの選手数名が顔を押さえたりユニホームを脱いでおり、クラブ役員が審判団や警官、
 
南米サッカー連盟役員らに猛然と何かをいっている。
 
どうやら選手に危害が加えられたらしい。
 
 
 
そんな状況がしばらく続いていると、スタンドから一斉に拍手が沸き起こった。
 
何事かと思ったら、最近は日本で何かと話題のドローンがピッチ内を飛行している。
 
そして、「B」と書かれた白い布(これは幽霊をイメージしたもの)を垂らしていた。
 
BはPRIMERA B NACIONAL(2部リーグ)のことで、
 
2011年にリーベルが2部落ちしたことをからかったもの。
 
ドローンはリーベルの選手の近くをかなりの低空で飛行し、やがてスタンドへ戻っていった。
 
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ピッチ上では長々と話し合いが続き、被害を受けた選手はベンチ内で手当てを受けている。
 
しかし場内アナウンスは一切なく、何が起きたのかさっぱりわからない。
 
ラジオを持っていたカメラマンに訊くと、何かの液体をかけられて負傷したとのこと。
 
そしてそのまま約1時間半が過ぎ、この件について初めてのアナウンスが、「試合は打ち切りです」だった。
 
 
 
何が起きたのかというと、ボカのサポーターが、リーベルの選手に
 
護身用のペッパースプレーを浴びせたのだった。
 
ビジター用ロッカールームからピッチへの出口は、ゴール裏スタンドの真下にある。
 
そこをトンネルで覆ってあるもののビニール製の仮設なので若干隙間があり、そこを目がけて金網越しに噴射。
 
これにより選手は軽度の火傷と角膜炎を負った。
 
事件から5日後にその瞬間を捕えたビデオが公開され、犯人も特定された。
 
 
 
試合は打ち切られたが、その時点では結果は未確定。
 
ボカは、「残りの45分を行う」と息巻いていた。
 
しかしFIFAが、選手に危害を加えるとはとんでもないこと、と敏感に反応し、
 
「主催者である南米連盟が、厳しい処罰を下すことを望む」との声明を発表。
 
この圧力により、ボカは南米の国際大会から最低でも1年間締め出されるのではないかと予想された。
 
 
 
事件から2日後にこの件に関する会議がパラグアイの南米連盟本部で行われた。
 
その結果は、この大会はボカの失格、今後ホームの4試合は無観客試合、
 
今後アウェイ4試合はボカへチケットを売らない(ボカサポーター入場禁止)、
 
20万ドルの罰金という非常に軽いもの。
 
人気チームのボカが不在では視聴率にも大きく影響するので、
 
南米連盟はFIFAよりもスポンサーの圧力に屈した形となった。
 
 
 
このスキャンダルを引き起こしたのは、エル・パナデーロ(パン職人)のニックネームで呼ばれる
 
パン屋の店主アドリアン・ナポリターノ。
 
現在雲隠れ中だが、電話でのインタビューでは、
 
「まさかこんな大事になるとは。思わずやってしまった。我に返ったときは死にたかった」と反省しきり。
 
検察は、出頭して供述すれば、軽犯罪として処理し起訴しない方針だという。
 
しかし夫人が留守を預かるパン屋には、脅迫が殺到している。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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