糠漬けを始めたが、アルゼンチンには適した野菜が少ないと以前書いた
しかし路上でボリビア人のおばあさんが、素晴らしいショウガを売っているのを見つけた。
最近は多くの八百屋でショウガは手に入るものの、スカスカでパサパサなのだ。
おろして搾り汁を取ろうとしても、汁がわずかしかない。
甘酢などの液体に漬けるのならいいが、糠漬けにはできないと思っていた。
 
 
路上でおばあさんがハーブなどを売っていたので、何気なく見ると、パンと張ってみずみずしいショウガがあった。
手に持ってみると、しっかりした重みがある。
日本のものに近い感触だ。
すかさずこれを買って漬けてみた。
1日だと辛みが強いが、2日漬けると非常に旨い。
客を招いたときに食べてもらうと、大絶賛された。
何よりの収穫は、このようなショウガも売っていることを知ることができたことだ。
 
 
ところがある日、糠床の容器のふたを開けると、シンナーのような刺激臭がツーンときた。
糠の表面は白くなっている。
これは産膜酵母なるものが増殖したためらしい。
糠床には乳酸菌と産膜酵母やその他の菌が混ざっているが、乳酸菌は空気が嫌いで、産膜酵母は空気が好き。
このため糠の表面では産膜酵母が増えるので、そうさせないように糠床の上下を入れ替えるようにかき混ぜなければならない。
それをさぼるとシンナー臭が出てしまうのだという。
しかし、ホルヘは毎日必ず混ぜている。
それなのにこうなるとは、まるで無実の罪に問われたような感じだ。
 
 
しかし、思い当たることはある。
台所の床が一部盛り上がってきてフカフカしたような状態になった。
マンションの管理人に相談すると、「床下の水道管から漏水しているのではいか」という。
そこで業者を呼び、床を壊すことになるだろうからと、冷蔵庫以外をすべて床から片付けた。
マンション管理会社の人も業者と一緒に来て、「漏水の可能性が高いが、下の部屋の天井に水漏れがないから、もう少し様子をみよう」との判断を下した。
そのようなことがあったので、糠床の置き場が変わり、少し日の当たる場所になってしまった。
おまけに容器は半透明のプラスティック製。
その状態が続いたのが原因かもしれない。
 
 
米糠は、単にパサパサした粉だ。
塩水を加えて適度な味加減と固さにし、さらに旨味が増すようにダシ昆布、干し椎茸、スルメ、ニンニク、そして虫よけで鷹の爪を入れ、乳酸菌が発酵する様に1日2回混ぜながら捨て漬けを10日ほど繰り返すことで、やっと糠床となる。
単なる粉に生命を吹き込んだのだ。
その後も毎日混ぜて、水気が多ければそれを取り、味が薄くなれば塩を足す。
まさに、手塩にかけて育ててきたのだ。
そうなると当然、愛しい我が子のように思えてくる。
 
 
病気の子供を見捨てる親はいない。
絶対に治してやると決意し、さすがに寝ずの看病まではしないものの、新たに捨て漬けを行い、1日2回でいいところを3,4回手を入れ、悪玉菌を退治し乳酸菌が増えるよう、ビオフェルミンを砕いて定期的に投与した。
この甲斐あって、約2週間で糠床は復活。
これから、全快した我が子による初作品であるショウガをいただくことにする。