世界的に有名な日本の料理は、寿司かすき焼だと思う。
 
しかしこれが国民食かといえばさにあらず、ラーメンかカレーだろう。
 
最近は回転寿司が充実し一部のラーメンが高級化して逆転現象があるものの、
 
ラーメンとカレーが日本の大衆食代表であることは間違いない。
 
 
 
アルゼンチンの国民食はピザだ。
 
イタリア系移民が多いのでパスタ文化が根付き、なかでもピザの人気は高い。
 
他の具が何もなく、モッツァレラチーズだけの真っ白いピザもある。
 
そば通がもりそばを好むのと同じで、ピザ好きはこれに目がない。
 
 
 
ホルヘもたまに家でピザを焼く。
 
そのときは、生地から作る。
 
ピザ生地はどこでもあり、隣のスーパーでも売っている。
 
しかし一人分には大きすぎるし、生地が厚い。
 
ホルヘの好みは、薄くてパリッとしたもの。
 
ア・ラ・ピエドラ(石釜風)と呼ばれるが、この生地を売っているのは見たことがない。
 
 
 
そこで粉を練って生地を作るのだが、さすがピザ大国。
 
ピザ用の粉を売っている。
 
イースト菌だか酵母が入っていて、ふっくら仕上がる。
 
 
 
ピザ通でないホルヘは、チーズだけでは味気ないので、
 
ピーマン、トマト、タマネギ、ハムなど具をたくさん入れる。
 
すると薄い生地が具の重さに耐えきれず折れ、
 
具が落ちて服を汚すというのがホルヘピザのあるある。
 
 
 
つい先日、久々にピザが食べたくなった。
 
食材の買い出しに行く前に、粉は以前の使いかけがあったはずだ、と思い出した。
 
流しの下の定位置に、それはあった。
 
半年以上前に開封したものだが、小麦粉は腐ったりしないはずだ。
 
しかし、イースト菌だか酵母が入っていると話は違うかもしれない。
 
 
 
そこで袋の中を覗いてみると、湿気で固まった様子も異臭もなく、大丈夫そうだ。
 
しかし、以前の記憶に比べると、やや茶色っぽいような気がする。
 
そこで、明るい場所で顔を近づけてよく見てみた。
 
 
 
初めは、焦点が定まらないのかと思った。
 
歳をとると、老眼の影響でこういうことがよくある。
 
やがて、粉がサラサラ動いているような気がした。
 
袋を揺すっていないのにおかしいな、と目を凝らすと、1ミリほどの小さな虫が無数に粉の中にいた。
 
全身、鳥肌。
 
なんと、おぞましい光景か。
 
これを書いている今も、また鳥肌が立ってきた。
 
 
 
そういえば、すごく小さいアリのような虫を、キッチンで何度か見かけていた。
 
気になって砂糖が置いてあるあたりなどを調べたが、異常なし。
 
そこで、買った野菜に付いていたのだろうと思っていた。
 
 
 
それがまさか、ピザ粉をエサとし巣として繁殖していたとは。
 
ガサツな性格なので、使いかけの袋をそのまま放置していたためだ。
 
食品への異物混入については図太い方だと思っている。
 
ピザの中にアリが何匹か入っていたとしても、さほど驚かないだろう。
 
しかし今回は、無数の虫がうごめくというビジュアルにやられた。
 
これから、使いかけの粉は密閉容器に入れることにする。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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