アルゼンチンには中国人が多い。
 
以前にも書いたが、ブエノスアイレス市のベルグラーノ地区にはちゃんとした中華街まである。
 
元々は台湾系が多かったようだが、最近は大陸の人たちが次々とやってきている。
 
 
 
15年ほど前は、中国からの移民はカナダやアメリカへ行くための手段だといわれていた。
 
これらの国へ中国から直接移住申請して永住権を得るのは難しい。
 
そこで、一度南米へ渡り、そこから申請する。
 
南米は賄賂が横行しているので、役人に金を掴ませて書類を偽造するという方法もある。
 
バブル時代、日本へ多くの南米日系人が出稼ぎに来ていたが、中には全く日系でない南米人が、
 
偽造書類で堂々と入国していた。
 
賄賂によって作られたものであろうと、その国が正式に発効した書類となれば、
 
入管は文句をつけられない。
 
 
 
しかし現在は、ほとんどの中国人移住者の目的は、アルゼンチン定住のようだ。
 
街には「スーペルメルカード・チノ」と呼ばれる中国人経営のスーパーマーケットが、あちらこちらにある。
 
ホルヘの家から3ブロック(約300メートル)以内に5件もあるのだ。
 
 
 
家の隣のスーパーで先日、お店の人と話した。
 
日本人はアルゼンチンに何人いるのかと訊かれたので、3世や4世を合わせても3万人はいないと答えた。
 
すると、「そんなに少ないのか。中国人は12万人いる」という。
 
さらに、日本からのフライトは何時間だと訊くので、30時間くらいと答えると、
 
「そんなにかかるのか。北京からは16時間」だという。
 
まさか。
 
 
 
この人によると、直行便があるのだそうだ。
 
現在、世界最長時間のフライトは、ニューヨークとシンガポール間の17時間のはず。
 
それ以上は、燃料が足りなくなる。
 
はたして、北京からブエノスアイレスまで16時間で着くのだろうか。
 
まず、そこが疑問だ。エアーチケット販売サイトで調べたが、直行はなかった。
 
 
 
直行便というのは、飛行機会社にとってデメリットもある。
 
物理的に可能だとしても、日本から南米へ飛ばしたところで、そんなに客はいない。
 
欧米の大都市を経由した方が、搭乗者が増えて経営は安定する。
 
しかし、このデメリットは中国には当てはまらない。
 
なんと、今後30万人がやってくるのだ。
 
 
 
今の中国の勢いは計り知れない。
 
金をバンバンばらまいて外交で有利に立っている。
 
経済危機のアルゼンチンは、中国から多大な支援を受けている。
 
そしてその見返りとして、南部のネウケン州に中国のロケット打ち上げ基地を造ることになった。
 
アルゼンチンは50年間その土地を中国に貸すのだ。
 
計画では、工事にはアルゼンチン人を使わず、すべて中国人で行うことになっている。
 
そのために30万人がやってくる。
 
 
 
30万人が同じ地域で暮らし、流通するお金は中国の元。
 
道路標識なども中国語。
 
まさに、アルゼンチンの中に中国の都市ができるのだ。
 
直行便が可能だとすれば、彼らを運ぶために飛ばすことはありうるだろう。
 
 
 
このロケット基地には疑惑もある。
 
軍事目的に転用され、アメリカまで射程距離のミサイルを配備するというのだ。
 
この噂に、パラグアイ、ホンジュラス、パナマ、ドミニカなど
 
台湾と外交を結んでいる南米、中米の国々は戦々恐々としている。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

Related Posts