代表同士の対戦は、ときに戦争にたとえられることがある。
 
歴史的に仲の悪い国々というのはあるもので、そうしたところではサッカーの試合が、
 
国の威信と名誉をかけての激突ということになる。
 
しかし最近では、サッカーを戦争にたとえるのはやめよう、という風潮になっている。
 
ライバル心を必要以上に高めることで相手国に対する国民感情が悪化し、
 
差別や虐待といったことにつながりかねないからだ。
 
今年行われたコパ・アメリカでも、選手たちは口を揃えて、「サッカーは戦争じゃない」とコメントしていた。
 
 
 
そんな流れに逆行しているのはボリビア代表。
 
テストマッチでアルゼンチンに0-6で敗れたのは、
 
代表としての自覚、愛国心、闘争心が足りないからだと、
 
選手を陸軍学校に入れて軍事教練をさせた。
 
小銃や機関銃の射撃訓練を含めた本格的なものだったそうだ。
 
こんなことを考えた代表監督は、横浜マリノスでもプレーしたバルディビエソ。
 
彼はボリビアリーグでアウローラを率いていたとき、
 
息子のマウリシオを12歳でプロデビューさせて物議をかもした。
 
要するに変人なのだ。
 
しかし軍事教練の効果も薄く、南米予選は4戦して1勝。
 
この勝利はホームでベネズエラ相手に挙げたもの。
 
ベネズエラは選手15名が監督と協会に反旗を翻して
 
代表への不参加を表明するなど空中分解状態なので、
 
これに勝つのは当然のこと。
 
今回も、本大会への道は厳しい。
 
 
 
ボリビアは1994年のW杯アメリカ大会に出場している。
 
そのときは、エチェベリ、サンチェス、バルディビエソらのタレントが揃った黄金期だった。
 
さらに、標高3600メートルというラパスの地の利もあった。
 
このときの予選では、ラパスの試合後、ブラジルの選手にドーピング検査でコカインの陽性反応が出た。
 
しかし調査の結果、コカインを摂取したのではなく、高山病に効くとされるコカ茶を飲んだためとわかった。
 
 
 
コカの葉はコカインの原料だが、日常生活で多様に使われている。
 
歯磨きや外傷薬といった加工品があり、ティーバックのコカ茶や葉っぱそのままでも売っている。
 
葉っぱ噛んだり煎じて飲むと、元気が出て高山病にも効果があるという。
 
 
 
しかし、ホルヘの経験からいうと、劇的な効果はない。
 
ラパスの環境に慣れ、標高5400メートルのチャカルターヤスキー場へ行った。
 
ここは、世界で最も高いとこにあるゲレンデらしい。
 
さすがに、空気が薄い。
 
いくら吸っても十分な酸素が入ってこない。
 
スキーをしたが、ターン2回ごとに止まって深呼吸が必要。
 
やがて激しい頭痛に襲われた。
 
コカ茶を薦められたが、飲んでも治らない。
 
「葉を噛め」といわれ、噛むより効果があるだろうと5~6枚を食べたが、一向に頭の痛さはおさまらない。
 
元に戻ったのは、ラパスに着いてからだった。
 
時間差でコカが効いたのか、高所から降りたから治ったのかは不明のままだ。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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