昨日、コパ・リベルタドーレス決勝戦のラヌース対グレミオに行ってきたが、今回は例年と違うことがいくつかあった。
まず戸惑ったのは、取材申請の方法。
アルゼンチンにはARGRAという報道カメラマン協会があり、取材者が殺到する試合では、ここが人数コントロールを行う。
代表の試合は協会に取材申請するものの、誰に許可を与えるかの判断は、ARGRAが実質的に行っている。
取材許可を与えるだけでなく、カメラマンの仕事がしやすいよう現場を仕切り、さらにハーフタイムにはコーラやサンドイッチまで用意してくれる。
我々にとっては、強い味方なのだ。
 
 
しかし今年のコパ・リベルタドーレスは、主催者であるCONMEBOL(南米サッカー連盟)の決定により、カメラマンを含めたすべての報道陣はホームチームの管理下で取材をすることとなった。
ARGRA外しである。
FIFAゲートでCONMEBOL幹部も多数逮捕されたが、その容疑はマーケティング会社、テレビ局、政府関係者らとの贈収賄。
新生CONMEBOLとしては、外部組織と新たな癒着が生まれないような措置を講じたことを世間にアピールする必要がある。
今回の件もその煽りなのかもしれない。
 
 
準決勝まではプレスカードの提示だけで取材できたが、決勝戦になれば、通常は取材申請をして許可証を得なければならない。
しかし、その方法がわからない。
試合の1週間前に、「何か情報は入っていないか」とARGRAに問い合わせたが、「何もない」とのこと。
ラヌースのプレス担当に2度メールするも、返事がない。
あちらも経験がないことなので、どうしていいのかわからないのかもしれない。
結局、申請の受付が始まったのは試合の前々日で、許可を得たのは試合前日という慌ただしさだった。
 
 
当日ピッチに入ると、センターサークルに巨大な何かが置かれている。
ここがレゲー歌手のショーステージとして使われ、さらに頂上から優勝カップが登場するというセレモニーが行われたが、こんなのも今までなかった。
 
 
日が完全に落ちてもメインの照明は点かず、選手は暗い中でアップをしている。
照明の故障かと思ったが、これも新しい演出だった。
 

 
 
そしてもうひとつ、今回初めて目にしたものがある。
それは、スタジアムの大画面スクリーンで試合の映像が流されていたことだ。
スクリーンに試合映像が流れるのは当然だと思うだろうが、アルゼンチンでは見たことがない。
スクリーンが設置されているスタジアムは少なくないものの、試合中にプレーの映像は流さない。
これが活躍するのは、主に試合前。
CMが流れたり、スタンドの観客が映される。
ホームチームの過去の名シーンを流すこともあるし、ベレスのスタジアムではビートルズのビデオを観た記憶がある。
そしてスタメン発表では顔写真を出すのに使われ、試合中は時間と選手交代が表示されるだけ。
 
 
放映権の問題か、サポーターの興奮を抑える目的かわからないが、試合中にプレーの映像はこれまで流されなかった。
準決勝のリーベルスタジアムでもそうだった。
すくなくともホルヘは一度も観たことがない。
しかし、昨日は流れていた。
 
 
「アルゼンチンも進歩したものだ」と感心したが、選手交代のときにあることに気がついた。
交代出場選手の背中が映されたとき、数字が反転しているのだ。
すべて、左右が逆になっている。
いつ直るかと気にかけていたが、ずっとそのままで、やがて画面が消えたり点いたりを繰り返し、最後には真っ暗になってしまった。
 
 
アウェイの第1試合を0-1で落としているラヌースは早く先制点を奪いたかったが、26分、カウンターからフェルナンジーニョに決められてしまう。
さらに41分にはルアンのゴールで0-2となる。
2試合トータル0-3という絶体絶命のピンチ。
準決勝のリーベル戦では、まったく同じ状況から後半に4得点を挙げて逆転しているが、奇跡は続かず1点を返したのみ。
グレミオが1983年、95年に次ぐ3度目の栄冠を手中にした。
  
 
グレミオのユニホームは空色、白、黒の3色でデザインされており、それゆえトリコロールと呼ばれる。
家に戻って午前2時ころテレビを観ると、街中で祝杯を挙げているグレミオサポーターにインタビューをしていた。
その中の一人が着ていたのは、空色と白の縦縞ユニホーム。
大昔に使用していたシャツの復刻版だという。
インタビューアーが、「アルゼンチン代表みたいじゃない」と突っ込んでいたが、本当によく似ている。
元々は2色だったのが、「ライバル国の代表と同じではまずい」ということで、黒をプラスしたのではないだろうか。
 


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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