またしても、病関係のネタになってしまった。
昨年7月頃の夜、右下の奥歯が激しく痛んだ。
このままの痛みが続くなら、翌日には歯科医に行こうと決断したほどの痛みだった。
歯磨きをすると血が出た。
こうした場合、血を出し切った方がいいと経験で知っていたので、ブラッシングを続けた。
すると痛みは軽くなり、翌日には収まった。
歯槽膿漏か歯肉炎が原因の歯痛だったようだ。
激しい痛みはこの1回だけだったが、その後も軽い痛みや不快感が忘れたころにやってきたので、
帰国したら歯科医でしっかり治療しようと思った。
なぜアルゼンチンで治療しなかったかというと、保険が効かないから。
我慢できない痛みなら背に腹は代えられぬが、そうでなければ節約する。
アルゼンチンでは、公立病院は無料で診療してくれる。
しかし大勢の患者が押し寄せて長時間待たされるし、予算不足で薬剤や設備が心もとない。
したがって中流階級のほとんどは、民間の健康組合に加入している。
それに入っていれば、提携している病院で無料や廉価で診てもらえる。
費用は、ホルヘの年齢だと、月額1万円ほど。
インフレの影響で、これもどんどん値上がりしている。
だからホルヘはこれに入らず、日本の旅行保険を利用している。
長期間だから相当高いと思われるだろうが、そうでもない。
こうした保険金で保険会社の支払いが最も高いのは、被保険者が死亡した場合に遺族に支払われるもの。
逆にいえば、この金額設定を下げると、保険全体の掛け金を安くすることができる。
妻子のいないホルヘは、ここをバッサリ削っている。
しかし、この保険は歯の治療が適応外。
したがって、日本で治療することにしたのだ。
正月明けすぐに行くつもりだったが、痛風のおかげで1月中旬になってしまった。
向かったのは、これまでに何度もかかったことのある地元の歯科医。
問題の歯は一番奥なのだが、レントゲン画像を見た医師は、「土台の骨が溶けちゃっている」という。
歯自体は根もしっかりしているが、どこかから入った歯周病菌により、骨がやられてしまっていた。
金属の細い器具を歯周ポケットに刺すと、ズブズブ入っていく。
普通は2~3ミリだというのに、侵入を阻止する骨がないため14ミリも入っていく。
このまま放っておくとさらに溶けるので、「抜くしかないな」と医師はいう。
ここまで進んでいると、治療しても効果がないそうだ。
それなりに信頼している医師ではあるが、歯を抜くというのは大事だ。
できることなら、抜きたくない。
そこで、返事は保留して別の歯科医院でも診てもらうことにした。
これまでのいきさつを説明し、「セカンドオピニオンを聞きに来た」と告げる。
しかし、どうもこれが悪かったようだ。
人のいいというか気弱な医師だったので、「抜いたほうがいい」といった医師に気を使ってか、
「それもひとつの方法ですね」などとはっきりしたことを言わない。
結局、何の役にも立たなかった。
今度は状況を一切説明せず、別の医院にサードオピニオンを聞きに行くことにする。