フランスのイエローベストデモや香港のデモは日本のメディアが伝えているが、アルゼンチンでも最近はデモだらけだ。
そして、アルゼンチンのそれはフランスや香港のものとだいぶ違う。
デモにもお国柄があるようだ。
フランスや香港のデモは週末に行われる。
労働者や学生が休みの日に集結するからだ。
しかしアルゼンチンでは、平日に行われるのが普通。
この数週間は、月曜から金曜まで、毎日のように大規模なデモが行われている。
 
 
以前書いたように、8月に行われた大統領選挙の予備選挙で、前大統領のクリスティーナ派は現職のマクリに大勝。
それにより国際金融市場でアルゼンチンは信用を失い、ペソや株価が大暴落した。
そして諸物価は大高騰。
10月の本選挙でもクリスティーナ派が勝てば経済はさらに悪化すると考える人々は、マクリ支援のデモを行う。
しかしそれより圧倒的に多いのが、生活苦を訴えて現政権を批判する勢力だ。
 
 
参加者はスクールバスなどをチャーターし地方からやってくる。
小さな子を連れた親子や家族も多い。
たまに警官隊と衝突することもあるが、警察がデモに寛容なため、基本的には大きな騒動にはならない。
行進しながら、あるいはその場で太鼓を叩いて歌うというのがお決まりのスタイル。
大音響の爆竹も欠かせない存在だ。
 
 
この人出を利用して儲けようと、会場にはチョリパンやハンガーガーを売る屋台も出ている。
参加者は、まるでお祭りかピクニックに来たかのように楽しんでいる。
おまけに、参加者には日当が支払われるのだからいうことない。
主催する労働組合などが、その潤沢な資金を使って参加者を集めている。
地方の失業者にとってデモとは、子供を連れて都会に遊びに行けた上にお金までもらえる素敵な娯楽なのだ。
 

 
 
しかし、会場周辺の人々には迷惑も多い。
立小便による悪臭が漂ったり、商店の多くが通常営業ができなくなる。
小売店はデモ参加者が店内に入っての集団万引きを警戒してシャッターを閉じる。
飲食店もデモ中は一般客が入らず開店休業状態。
さらに、道路を占有されたことで激しい交通渋滞も起こる。
 
 
先日は、デモ隊の一団が高速道路から街の中心部を目指した。
ゾロゾロと高速の入り口から侵入し、本線に入ると3車線のうち2車線を占拠。
おかげで高速は大渋滞となった。
また、常に会場となる目抜き通りのヌエベ・デ・フリオは、ときにバスレーンまでも占拠されてしまい、公共交通にも多大な影響が出る。
 
 
アルゼンチンのデモには「お泊り」もある。
抗議を示す手段として、テント張って泊ってしまうのだ。
国会前広場や大統領府(カサロサーダ=ピンクハウス)前広場によくテントが張られる。
その「お泊り」が、つい先日はヌエベ・デ・フリオ大通りでも行われた。
道路を占有してテントを張り、48時間の抗議活動
持ち込んだ大鍋と食材で料理を作り、路上のあちこちで焚火がたかれる。
これはもう、完全なるキャンプだ。
普通のデモがお祭りかピクニックで、「お泊り」はそれを上回るキャンプ大会。
抗議行動といいつつ、参加者は単にレジャーを楽しんでいるようにしか見えない。
 
 
連日のデモの実態は、労働組合に先導された失業者たちの小遣い稼ぎ兼レジャーなのだ。
今週は再びヌエベ・デ・フリオで、72時間のキャンプが行われるという。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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