嵐の中でのサッカーは、結構楽しいものだ。
 
ホルヘは二度、台風直撃のときにプレーしたことがある。
 
千葉県で合宿をしていたら、台風が房総半島に上陸した。
 
バケツをひっくり返したような豪雨となり、グラウンドはたちまち水没。
 
表面を水が覆ったというレベルではない。
 
田んぼのようになり、ボールがプカプカ浮くのだ。こんな状況で練習試合を行った。
 
 
 
ドリブルは、浮いているボールをつま先で突っついて追いかける。
 
テクニックもへったくれもない。
 
上手いも下手も関係ない。
 
守るも攻めるも水中へのダイブを繰り返す。
 
泥んこになって、童心にもかえれた。
 
 
 
二度目は、コパ・チリという草フットサルの国際大会。
 
会場は巣鴨の三菱養和だった。
 
このときも台風が東京に上陸。
 
後で聞いた話では、この日に東京で行われた屋外スポーツは、この大会と某所のラグビーだけだったとか。
 
三菱養和のグラウンドは人工芝だが、これは土台のアスファルトの上に敷かれた巨大な絨毯のようなもの。
 
大量の雨が土台と絨毯の上に入り、今回はボールでなく、人工芝そのものがプカプカ浮いてきた。
 
グラウンド全体が、ウォーターベッドのようになってしまったのだ。
 
ブヨンブヨンで表面が波打つ人工芝の上では、グラウンダーのパスは通らず、浮き球も強風で煽られる。
 
まるでフットサルにはならないが、めちゃくちゃ面白かった。
 
 
 
春の嵐が吹き荒れたバレンタインデーに、ホルヘはサッカーの杉並リーグに出場した。
 
大雨の予報もあったがそれは外れ、強風と小雨の中でキックオフ。
 
前半は優位な風上に立つも、これが全然優位にならない。
 
グラウンダーであろうと、絶好のパスが強風に吹かれてコロコロ転がり、
 
追いかけても追いかけても差が縮まらない。
 
風に遊ばれ、無意味なダッシュを繰り返すだけだった。
 
嵐の中でのサッカーなので期待していたが、全く楽しくない。
 
やって楽しいのは、嵐の中ではなく、豪雨の中だということに気づかされた。
 
 
 
この試合は、ホルヘにとって今年の初ゲームだった。
 
例年は、この大会のため正月明けからトレーニングに入る。
 
しかし今年は痛風を患ったため、これができなかった。
 
2月に入っても階段がまともに降りられないような状況で、ジョギングすらしていない。
 
さすがにこのまま試合というのは不安だったので、強めのウォーキングをすることにした。
 
 
 
何を隠そう、ホルヘは上流育ちだ。
 
杉並区浜田山という、神田川の上流で育った。
 
この川沿いには遊歩道があり、流れの源である井の頭公園へは、ジョギングやウォーキングで何度も行っている。
 
しかし下流の方へは途中までしか足を運んだことがないので、今回は流れの終点を目指すことにした。
 
そこは、隅田川。
 
 
 
環七を渡って中野区、渋谷区を通り、明治通りを越えて新宿区へ。
 
文京区に入ると遊歩道はなくなり、外堀通りをテクテク歩く。
 
東京ドーム前にさしかかると、場外馬券場にギャンブラーが群れている。
 
疲れてもいたし喫煙所もあるので、ここで休憩することにした。
 
しかし博打場に行って休憩だけで出てくるほど、ホルヘは人間ができていない。
 
浦和競馬で勝負をするが、あっさり負けた。
 
 
 
その後、御茶ノ水、秋葉原、浅草橋を通って、ゴールである神田川と隅田川の合流点に到着。
 
約20キロメートルを、休憩を入れながら5時間弱で歩き切った。
 
いきなりの試合で、とりあえず最後までプレーできたのは、このウォーキングのおかげだろう。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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