コパ・アメリカの準々決勝は、アルゼンチンがベネズエラを2-0で下した以外は、いずれも0-0からのPK戦で、ブラジル(対パラグアイ)、チリ(対コロンビア)、ペルー(対ウルグアイ)が勝ち上がった。
そんな中、チリに思わぬ事態が発生した。
チリは自国開催の2015年大会でコパ・アメリカ初優勝を飾り、翌年の100周年記念大会も制覇。
これまでコパ・アメリカ3連覇はアルゼンチンが18回(1945年)~20回(47年)に達成した一度だけ。
15年まで無冠だったチリが今回優勝すればそれに並び、来年開催の次回大会も制すれば前人未到の金字塔を打ち立てることになる。
これは、コパ・アメリカの歴史のみならず南米サッカー史を大きく書き換えるような出来事だ。
長年中堅国に甘んじていたチリにとって、この偉業は是非とも達成したいものだ。
 
 
次回大会は来年なので、サンチェスやビダル、メデルといったベテランもまだまだ大丈夫。
今回勝てば4連覇実現の可能性は高い。
そして準決勝は組みやすいペルーが相手と、当面の目標である3連覇への好条件も揃った。
 
 
ところが、チリの2連覇に異を唱える者が登場した。しかもそれは身内であるはずのチリ人のサッカー研究家エドガルド・マリン。
彼は、16年の大会は100周年記念大会なので公式大会ではないと主張。
この大会はアメリカで開催され、CONCACAF(北中米カリブ連盟)からも6か国が参加した一大フェスティバルだった。
しかし試合にはお祭り的要素はなく、ガチンコ対決の末に決勝でアルゼンチンを下した堂々とした優勝だった。
 
 
その表彰式で授与されたのは伝統の優勝カップではなく、記念大会用に作成された金色のカップだった。
通常コパ・アメリカに優勝すると、その協会にレプリカが贈呈される。
しかし記念大会のカップは持ち回りでなく永久保持なので、レプリカはない。
さらに、優勝チームはユニホームの胸に、ディフェンディングチャンピオンの証である金色のエンブレムをつけるのだが、現在のエンブレムに記された数字は2016でなく2015。
したがってチリは連覇していないとマリンは主張する。
 
 
これに対して協会は、記念大会だから特別なカップを授与されただけで、大会自体はコパ・アメリカ以外の何物でもないと連覇の正当性を力説。
そして結論は主催者であるCONMEBOLに委ねられ、その判断はというと、「チリはアメリカ大陸の偉大な大会を連覇したが、その二つは違う大会であり、チリが持っているコパ・アメリカのタイトルは15年の一つだけ」というもの。しかし、このような重要なことがなぜ今頃議論されるのか。
各国のマスコミはチリを「ビカンペオン」(2連覇王者)という呼称で呼んでいたし、「今大会を制すればアルゼンチンに並ぶ」と盛んに報道していた。
しかしCOBMEBOLはそれを否定しなかった。
今回の騒ぎなって、初めて「2連覇か否か」という問題を認識したとしか思えない。
 
 
そもそもはCONMEBOLが16年の大会開催以前に、それが公式大会なのか特別枠の大会なのかを明らかにするのが筋というものだ。
もっとも、このあたりが南米らしさではあるのだが。
 
 
まずは3連覇、そして金字塔の4連覇という目標を持っていたチリにとって、CONMEBOLの裁定は非情だった。
選手はモチベーションを失い、準決勝ではペルーに0-3の大敗を喫してしまった。
 
 
もう一つの準決勝ブラジルとアルゼンチンの対戦は、メッシが今大会最高のプレーを魅せたものの2-0でブラジルの勝利。
アルゼンチンはシュート2本がポストに弾かれ、2度のPKチャンスを取ってもらえなかった。
特に2度目のPK疑惑(アグエロがアルベスに倒された)は、そこからのカウンターでブラジルの2点目が生まれている。
もしPKになっていれば、ブラジルの2点目はなかったのだ。
いずれのケースも主審によるビデオ確認は行われていない。
 
 
このため、アルゼンチンは選手も監督も協会も判定に大激怒している。
しかしアグエロを倒したアルベスによれば、「彼がマークを外そうと反転したときに俺の足を踏んだので、反則があったのなら向こうのほうだ」とのこと。
以前、ある元国際審判員が、「スロー再生すると、ほとんどがファールに見えてしまうので注意が必要だ」と語っていた。
そこに必要なのが人間の解釈だ。
ウルグアイ戦で中島が倒されたときは、「通れない隙間を通ろうとして相手に接触し転倒した」という判断だったと思う。
単純に、「相手の脚に引っかかって倒れたからファール」というものでもないのだ。
 
 
今大会に召集されたブラジル代表23名の総額は、何と11億万ドル。
これに対しアルゼンチンは7億4千万ドル。
その差3億6千万円が勝敗につながったのかもしれない。
両チーム合わせて最高額の選手はもちろんメッシで1億7千万ドルだが、5千万ドル以上の選手がアルゼンチンは4人なのに対しブラジルは13人。
この層の厚さの違いは無視できないものだ。
 
 
また、チーム再編中のアルゼンチンは、メッシと新メンバーたちの連携も課題。
メッシは持ち前のスピードで2~3人を引きちぎることがある。
そこで引きちぎれば大チャンスで周囲の選手も攻撃一本に絞れるが、引きちぎれなかった場合は二次攻撃のためのポジショニングをしなければならない。
まだ慣れていない新メンバーは、メッシが引きちぎれるか否かの見極めが遅いようだ。
 
 
ちなみにスカローニ監督は12月までの任期となる模様。
元々臨時監督だったが、テストマッチの成績が良かったことからコパ・アメリカも指揮することとなった。
もしここで結果を出せば正式監督就任もありえたが、この成績では厳しい。
 
 
日曜日に行われる決勝戦は地元ブラジル対ペルーの顔合わせ。
この両者はグループリーグで対戦しており、その際は5-0でブラジルが圧勝している。
ブラジル優位は動かないが、ペルーの調子は確実に上向いている。
75年以来3回目となるペルーの優勝も、ありえないことではない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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