例年、3月末にアルゼンチンへ戻っていたが、今年は4月上旬になった。
これは、実に日本的な理由によるもの。そう、花見だ。
仲のいいグループが、毎年4月の第一日曜日に花見を行っている。
今年は、これに何としても参加したかった。
2月は暖冬で、「この調子では、春分の日あたりに花見ができそう」といわれていた。
しかしその後寒くなり、「桜は例年並み」との予想に変わった。
その時点で出発を4月に決め、チケットを手配した。
我々のグループには、すべてを取り仕切る花見奉行がいる。
場所取りから鍋の用意、酒の手配まで一手に引き受ける、「花見命」というようなおじさんだ。
その彼が、法事だか何だかで4月3日は都合が悪いということで、3月27日に決めてしまった。
わざわざ4月のチケットを取ったのに、なんてことだ。
しかし、泣く子と花見奉行には勝てない。
3月末は、まだ4~5分咲き。
天気予報では、当日は寒く雨が降るかも、ということだった。
そこでアンダータイツをはき、カイロを貼り、ベンチコート着用という防寒態勢で挑んだ。
ところが昼前からピーカンとなり暑い、暑い。
喉が渇いてガバガバ吞んだらリミットを越えてしまい、久々に頭が痛くなった。
4月に入って満開になってから、別の花見にも2回参加した。
そのうちのひとつで、ピンと張った帯の上を歩いたりする、スラックラインを初体験した。
これの愛好者が参加していて、樹の間にラインを張って自分で技を魅せ、希望者には教えてくれたのだ。
ホルヘはバランス感覚が悪い。
バランスボールでもすぐに落ちる。
だから、やりたい気持ちはあったが、ガマンしていた。
遠慮ではない。
ガマンしていたのだ。
というのは、「やりたい、やりたい」といって挑戦した人たちが、
無様な姿をさらして笑いものになっているからだ。
スラックラインの持ち主が、両手を持ってサポートしてくれる。
しかし不安定なラインの上に立つと、足腰がブリブリと震える。
この様子が、非常に間抜けで面白い。
なぜか、女性より男性の方が激しくブリブリする。
ホルヘたるものが、こんなところでブリブリして笑いものになるわけにはいかないと、
やりたいながらもガマンしていたのだ。
これは、正しい判断といえる。
しかし、酒というのは恐ろしい。
酔ってくると正しい判断ができなくなる。
そしてついに、「俺もやりたい」といってしまった。
ラインの上に立つと、当然のごとくブリブリが始まり、笑いとからかいの声を浴びることになった。
酔って気が大きくなっているから、「汚名をそそがねば」と、今までの誰よりも上手く歩こうと思った。
ブリブリがおさまってから足を前に出すと、これが意外とスムーズにいく。
酔っ払いは真っ直ぐに歩けないものだが、ラインが揺れているため、
千鳥足で歩くとちょうどラインの揺れと合うのかもしれない。
結局、ターンや早足といった前人未到の技まで行い、喝采を受けることになった。
スラックライン、これは実に面白い。
また、酔ったらやろう。