4月4日に開業した新宿の高速バスターミナルの「バスタ新宿」。
翌日に、早速ここを利用することになった。
利用といっても、乗降したわけではないが。
ホルヘは空港リムジンを利用する際、京王プラザなどの始発ホテルから乗ることが多い。宿泊客でなくても、ホテル従業員がサービス満点で対応してくれる。いつも荷物が多いので、これは大助かりだ。
ホテルを出発したリムジンは、いつものように新宿西口へ向かうのかと思ったら、南口の方へ行ってバスタに入った。空港リムジンの乗り場までがここに移動したのは知らなかった。なかなか立派な施設だ。
バスタ新宿のバスタは、バスターミナルを略したもので、わかりやすく語感もいいネーミングだと思う。しかしスペイン語でバスタというと、「いい加減にしろ」とか「もうたくさん」という意味になる。小さな子どもが駄々をこねると「バスタ!」といい、反政府デモのプラカードも「バスタ!」だ。
ちなみに、子どもに対するときのバスタは、フィリピンでも使われているようだ。日本で目撃したことだが、フィリピン人女性が3人歩いており、そのうちの1人が子連れだった。
そして子どもが執拗に何かをいうと、母親らしき人が「バスタ」と怒鳴っていた。フィリピンはかつてスペインが支配しており、ドミンゴ(日曜日)などの曜日名にスペイン語が使われることは知っていたが、バスタも生き残っていたとは。
今回のフライトは羽田発。
ここから国際線に乗るのは初めてだ。レストランや土産物がある階は、祭り広場とか江戸小路といった純和風にデザインされている。
さらに何と、日本橋まである。
江戸時代、旅の出発は日本橋からだったことから、空港内に日本橋を架けてしまった。

HORUHE2

前回アルゼンチンへ渡ったとき、「役たたず二題」というコラムを書いた。そのうちの一題は、チェックインの際の職員についてだった。ホルヘの便はシドニー経由のカンタス航空。
機内預けの荷物が重量オーバーになりそうだったので、オーバーチャージの料金をカンタスのウェッブで調べた。ところが、これがわかりづらい。日本語になっているものの、本国であるオーストラリアが基準になっているからだ。
それによると、北南米以外の国際線は23キログラムを超えると1キログラムごとに20オーストラリアドルで、北南米発着便は32キログラムまで一律75オーストラリアドル。日本からオーストラリア経由で南米に行く場合、これらの何が適用されるのだろう。両方が適用され、ダブルで課金されるのかもしれない。
そこで電話で問い合わせると、75ドルのみとの答えを得た。ところがチェックインでひと悶着。前回は成田だったが、日本ではJALがカンタスの業務を代行しているので、職員は全員JALだった。彼女らもカンタスのウェッブを見るが、やはり理解できない。ホルヘが、「先日、カンタスに電話して、75ドルと聞いている」といっても、「確認させていただきますので、もう少々お待ちください」という。
JAL職員はカンタスに電話するも、すでに夜でオフィスは閉まっている。
そんなこんなで、かなり待たされた。
そこで今回は、搭乗の数日前にカンタスに「重量オーバーするかもしれない」と告げ、予約番号と氏名を伝えておいた。それが功を奏し、「三村様、お待ちしておりました。連絡承っております」との対応で、スムーズにチェックインすることができた。
もうひとつの「役たたず」は、シドニー空港のボディチェックマシーン。
ゲートを通過するタイプの金属探知機でなく、透明なドームの中に入れられて、全身をCTスキャンのようにされてしまう新型の機械だ。
痔を患っているホルヘは、長旅ではお尻に使い捨てカイロを貼る。
以前、肛門を低温火傷した経験から、厚手のパンツを2枚はいて貼っている。前回のシドニーで、新型マシーンに入れといわれて慌てた。肛門部に何かがあることが発見されれば、それは当然、不審物ということになる。
別室に連れていかれ、ズボンを下されることになるだろう。
しかし、何事もなくパスできた。なんだ、この機械は。
見掛け倒しではないか。冷静になって考えると、本当に不審物を持っているわけではないので、別室へ連れて行かれたほうが面白かった。
そのとき貼っていたのは、ミニサイズのカイロだった。そのせいで、機械が見落としたのかもしれない。そこで、今回はレギュラーサイズで挑んだ。
しかし、レギュラーは熱い。
ずっと座りっぱなしなので、カイロが常に肛門周辺に密着している。
このままでは、またしても低温火傷になるかもしれない。
そこで機内のトイレに入り、パンツ2枚の間にハンカチを入れて調整した。
そんな思いをして、やっとシドニー空港のトランジット検査場に到着。
しかしあの最新マシーンは、乗客全員が入るわけではない。係員が見て、怪しそうな人間を入れるようだ。大体においてホルヘは怪しい部類に見られるのだが、ここでは念には念を入れて演技をした。
胃の当たりを押さえ、気分が悪いような振りをしたのだ。
麻薬の運び屋は、ブツをコンドームに入れて飲み込んだりするらしい。気分が悪そうにしていれば、きっと疑われる。
この作戦が当たり、無事に例の機械へ入るようにいわれた。
そして、レギュラーサイズも功を奏したようで、
「ポケットに何か入っていないか」との質問。
そこでポケットを探ると、スーツケースのカギが出てきた。これは、ホルヘが本当に取り出し忘れたもの。
そのカギを見た係員は、「はい、行っていいよ」と放免してしまった。
機械はカイロに反応しているのに、係員はカギだと思ってしまったのだ。
ベルギーで空港テロがあったばかりだというのに、こんな甘いセキュリティでいいのか、オーストライアン・ピーポー。
またしても役たたずな係員が出現したが、この計画を失敗に終わらせた本当の役たたずは、カギを出し忘れたホルヘかもしれない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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