最近はインターハイ予選の取材をすることが多かったんですけど、その中でよく出てきたキーワードが“引退”の二文字。
とりわけサッカーと同じくらい、あるいはサッカー以上に受験へのウエイトが大きい高校に通っている3年生にとっては、インターハイで高校サッカーを引退するか、選手権まで続けるかというのは、これまでの人生の中でもあるいは最大の決断と言っても過言ではないかもしれません。
特になかなかゲームに出る機会のない3年生は、インターハイが終わってから選手権を迎えるまでの、夏休みを挟んだ3ヶ月近い時間というのは、受験勉強を考えれば一番大事な時期。
悩む気持ちはよくわかります。
もちろん正解はそれぞれが良く考えて出すべきなのは間違いありませんが、今回は僕が高校3年だった頃のお話をご紹介したいと思います。
 
 
僕が通っていた高校はいわゆる進学校でした。
生徒数1000人を超える男子校というむさくるしさMAXの環境の中(笑)、国立だったら東大や京大、私立だったら早慶を目指すような人たちがゴロゴロいるような感じだったので、ほぼ全員が100パーセント大学受験を視野に入れて3年間を過ごすような高校だったんです。
そんな我が校サッカー部が、何を間違ったのか県内の絶対的な強豪だった2つの高校を相次いで倒して、インターハイ県予選で優勝してしまい、全国大会へ出場することになったんですねえ。
そもそも県内でもベスト8に入れば上出来というチームだった我が校サッカー部は、例年であればインターハイ予選も早々に敗退していたため、6月にはもう大半の3年生が“引退”し、来たるべき受験に備えて勉強のギアを上げていくことになっていたんですけど、このまさかの躍進によって、インターハイ自体は少なくとも8月までは続くことになりました。
 
 
3年生は16人。もちろん全員がレギュラーという訳ではありませんし、ベンチ入りのメンバーに入れない3年生もいた訳です。
8月だと既に夏休みに入っており、学校からは「今年の夏休みがオマエらの人生を左右するんだ」なんて脅迫され続けてきた(笑)我々にとって、受験勉強の進度が明らかに滞るのは否めません。
それでも結局16人は全員が8月のインターハイまで“現役”を続行することを決断しました。
みんなで話し合ったりはしなかった記憶があります。
僕は幸いなことに試合に出させてもらっている側でしたが、なかなか試合に出る機会のなかったチームメイトに「一緒に残ろうよ」なんて安易なことは言えませんからね。
そんな中で全員の“引退”が先延ばしになったことが凄く嬉しかったこともしっかり記憶しています。
 
 
僕らが出場した全国大会の舞台は日本が誇る古都・京都。
また、何とも修学旅行っぽい場所じゃないですか(笑)
夜に窓を開けたら網戸にクワガタやカナブンが大量にへばりついていたような、奈良の“ナントカの森学校”みたいな宿舎で事前合宿を積み、京都の和風なホテルへと移動。
もう大会が始まる前までに“修学旅行”は1週間ぐらい続いており、まあ楽しかったんですよ。
空き時間はトランプばっかりやっていて、もう時効だから大丈夫だと思いますけど、1回ごとに“ワンコイン”的な金額を賭けていた『大貧民』で負け続けたウチのトップ下は、親が宿泊しているホテルまでお金を借りに行ってましたからね(笑)
元々全国に出てくるような学校じゃなかったので気負いもゼロ。とにかく楽しかったなあと。
 
 
肝心のサッカーの方も無欲というのは恐ろしいもので、1回戦、2回戦、3回戦とビギナーズラック的に勝ち上がり、まさかの準々決勝進出。
3回戦と準々決勝の間には1日の休息日があり、そこまでは想定していなかった宿泊費がショートし掛けるというハプニングもありながら(笑)、楽しい日々が想像以上に続きました。
準々決勝の相手は泣く子も黙る国見高校。
ただ、ここでも不思議と好勝負を繰り広げることができ、最後はPK戦で決めれば勝てる5人目のキックを僕がGKに止められ(涙)、6人目の3年生も大きく枠を外して、全国8強で快進撃もストップ。
翌日にちょっとだけみんなで京都を観光して、僕らの“修学旅行”は8月8日に終焉を迎えました。
 
 
結果としてレギュラーも含めた10人がインターハイでの“引退”を決断。
3年生は6人だけで選手権へと向かうことになりました。
正直かなり寂しかったですねえ。
選手権予選も結果として決勝で敗れたため、県内では本当に一番最後までサッカーを続けていた3年生になった6人は、それでも4人が現役で大学へ進学。
インターハイで“引退”した10人も大半は現役で志望校への合格を果たし、最終的にはサッカーと受験勉強の両立は本人たち次第ということを証明できたと言ってもいいような、我々3年生だったのではないでしょうか。
 
 
今でも僕らの代は凄く仲が良くて、1年に1回は必ず集まるんですけど、やっぱりあの時の“修学旅行”の話はよく出てきます。
そこまでも色々な想い出はあったけれど、3年生の夏休みという特別な時期に起きた、特別な経験というのが、僕らの絆をより深くしたことは間違いありません。
受験というのは人生の一大イベントですし、軽々しいことは言えないことも重々承知していますが、高校3年生の1年というのはおそらくは最も様々な想い出が色濃く刻まれる時期であり、おそらくは今後の人生で考えてもトップクラスにキラキラしていた時期になるはず。
その1年が多くの高校サッカーを頑張ってきた“3年生”にとって、充実した時間になることを願ってやみません。
 
 
なんか「選手権までサッカー続けようよ」みたいな雰囲気の文章なので、逆に言わないのもズルいかなと思い、素直にお伝えしたいことが最後に1つだけ。
前述したように、僕らの代で3年生の時に選手権までサッカーを続けて、浪人を選択したヤツらが2人います。
1人は翌年に“一浪”で志望校へと進学することになりましたが、もう1人の国見とのPK戦で6人目のキッカーを務めたヤツは、結果的に“三浪”することになりました…
僕らは今でもその彼に会う時は頻繁に「オマエ、もう1回高校サッカーできたじゃねえか」と結構ヒドいイジリをしているんですけど(笑)、そんな彼も立派に公務員試験に合格し、今では結婚までできました。
僕が彼に会う機会は1年に1回くらいしかないですけど、間違いなく幸せそうですよ。
人生は長いので、多少の回り道も必要。
最後に笑っていればいいんです。
でも、さすがに“三浪”はオススメしませんが(笑)

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About The Author

土屋 雅史

サッカー界のオモシロご長寿番組「Foot!」でディレクターを務めた後、制作部プロデューサーへ(昇進か?)。 国内外問わずのサッカー全般に関する知識はハンパなく、gol.界隈では「博士」の称号を得ている知識人。 スタジアムから土のグラウンドのピッチ横までジャンルを問わないサッカー観戦と、テレビ前でのサッカーウォッチングツアーはお勤めの会社への忠誠心だけではないはず! そこにはサッカーへのLOVEがある!溢れる知識と独自のサッカー観であなたの「観るサッカー」に彩りをそえちゃいます!

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