アルゼンチンリーグ第2節のウラカン対キルメスから、DNIを提示しないとスタジアムへ入れないようになった。
DNIというのは身分証明書のことで、アルゼンチン国民と定住が認められている外国人は全員が持っている。
ニュースでもこの件を大きく取り上げ、「DNIを忘れないように」、「チェックに時間がかかるので、早めに出かけるように」と伝えていた。
なんでも、顔写真で本人確認をし、証明書番号をスキャンして前科の有無やスタジアムへの入場禁止対象者かどうかを割り出すのだという。
 
 
アルゼンチン協会は2013年にAFA PLUSというシステムの導入を決めた。
これはスタジアムに入るすべての人間を管理するもので、サポーターだけでなく選手、審判、スタジアム職員らもこのシステムに登録しなければゲートを通過できない。
登録するとカードが発行され、これにはチケット購入の情報もインプットされる。
スタジアムへ入るには二つのゲートを通り、最初のゲートではチケットの有無がチェックされ、第2ゲートでは指紋照合がなされる。
ホルヘも登録したが、10指指紋を取られ、監視カメラの顔認証システムのためにさまざまな角度から撮影された。
 
 
AFA PLUSは前会長グロンドーナの肝いりで採用され、14年シーズンからスタートする予定だった。
しかし、未だに実現していない。
登録後にカードが郵送されてくるはずだったが、これも届かない。
だいたい初めから絵に描いた餅みたいな話だった。
マスコミはことあるたびに「AFA PLUSはどうなった」と追及するが、協会は、「いずれ開始する」と繰り返すばかり。
高価なゲートを多数設置する経費などの問題で、実質的に計画は頓挫したはず。
しかし登録料30ペソを受け取っているので、「あれは、中止にします」といえないのだ。
 
 
こんなシステムを導入しようとしたのも、スタジアムの内外で暴力事件が多発しているから。
現在は基本的にアウェイチームのサポーターの入場を禁じているが、仲間うちの殺傷事件も後を絶たない。
そこで今回のDNIチェックとなった。
この試合を皮切りにブエノスアイレス市内の試合で同様の規制が行われ、やがて全国すべてに広がるのだそうだ。
 
 
翌第3節のリーベル対サンマルティンに行った。
DNIコントロールですごく混んでいるかと思ったが、そうでもなかった。
スタジアムの400メートルほど手前に第1ゲートがあり、ここでDNIをチェック。
しかし、全員を対象にしていなかった。
女性や年配者、普通の人は素通りでき、ユニホームを着ているなどの熱そうなサポーターのみがチェックを受けていた。
それも、DNIを見るだけ。
身分証明書番号をスキャンするというようなことはやっていない。
これに、どのような意味があるのだろうか。
 
 
続く第2ゲートでチケットのチェック。
スマホのようなものをチケットに当てて、本物が偽造かを調べているらしい。
そして最後のゲートが、危険物がないかどうかのボディチェック。
この3つのゲートが、およそ100メートル間隔で設置されていた。
 
 
警官を大量動員しての物々しいセキュリティ。
しかし過去の例では、入場禁止の人間が警官を買収して堂々と入っていったこともあり、どこまで実効性があるかは疑問だ。
 
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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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