中学時代からのアミーゴが、嫁さんの実家から送られてくる玄米を家で精米していると聞き、「アルゼンチンへ持っていくから糠をくれ」と頼んでおいた。
今年は、糠漬けに挑戦しようと思っていたのだ。
糠はスーパーでも売っているが、何事も節約が大切。
タダでもらえるに越したことはない。
しかも、折り紙付きのあきたこまちの糠だ。
 
 
機内預けの荷物は、ハードケースと布製のバッグの2個だった。
糠はビニール袋に入れ、布製バッグに詰め込んだ。
ブエノスに着いてバッグを開けると、中身の位置が変わっている。
そして経由地であるダラス空港の書類が入っており、検査のためバッグを開けた、と書かれていた。
 
 
普通、荷物検査はX線で調べ、問題がありそうなものだけを開けるはず。
布のバッグには引っかかりそうなものは何もなく、疑われそうなものはハードケースにすべて入れておいたが、そちらは開けられていない。
となると、粉末である糠が麻薬と勘違いされたのかもしれない。
しかし、糠ってX線に映るのか。
あるいは、バカな麻薬犬が反応したのだろうか。
 
 
日本で糠漬けを作っていたことはあるが、かなり前のことなので自信がなく、改めてネットで調べてみた。
プロの料理人によると、雑菌を抑えて乳酸菌を活性化するには、ビオフェルミンがいいとのこと。
痔の手術後だったので、下痢や便秘にならないよう、医師からビオフェルミンを渡されている。
これを試すことにした。
 
 
まずは糠に塩水、昆布、唐辛子、干しシイタケなどを入れ、1日2回混ぜてなじませる。
その後、クズ野菜を漬ける「捨て漬け」を繰り返し、乳酸菌を増やす。
1週間ほどで糠味噌らしい匂いになってきた。
そしてそこに、ビオフェルミン投入。
さらに数日捨て漬けを続け、糠床が完成した。
 
 
しかしここで問題が発生。
糠漬けの代表格というと、キュウリ、ナス、大根、カブなどであろう。
ところがアルゼンチンのキュウリとナスはでかすぎ、大根は一般の八百屋ではめったに置いておらず、カブは見たこともない。
 
 
とりあえず、細いキュウリを漬けてみた。
皮が厚く青臭さも強いので、ピーラーで半分剥く。
出来上がりは、何とも微妙。
細いキュウリは育ちが悪いものなので、味もよくない。
かといって通常サイズだと種が口に当たるし水っぽい。
そこで、通常サイズを縦に切り、種の部分をスプーンで削ってから漬けてみた。
どうやら、これが正解のようだ。
 
 
ナスは皮が相当硬い。
以前、塩もみを試したが、食べられたものではなかった。
もし漬物にするなら皮をすべて剥かねばならないが、そんなものをナスの糠漬けと呼べるだろうか。
ということで、これはパス。
 
 
人参も糠漬けによくするが、これは脇役的存在。
食卓では漬物がすでに脇役なので、その中の脇役となるとランクは低い。
ピーマンが旨いと聞いたので試したが、これも日本のものの数倍あるので、失敗作になってしまった。
いずれ再挑戦しよう。
 
 
これまでのところ、仕上がりが一番いいのはキャベツだ。
これも脇役ながら、糠の香りがしっかりついて美味しい。
しかし水分が多く出て糠床を水っぽくしてしまううえ、葉のシワに糠が入り込んでしまうので、キャベツを漬けるたびに糠床が減っていく。
水っぽくなったり糠床が少なくなれば糠を足せばいいのだが、実は、残りの糠はあとわずか。
せっかく軌道に乗った糠漬け生活も、風前の灯火となっている。