10月22日はアルゼンチンでも国政選挙の投票日で、日本同様に与党勢力が勝利した。
 
 
その数日前、サンチアゴ・マルドナードなる人物の水死体が発見され大騒ぎになった。
ニュース専門チャンネルは、潜水士による捜索の模様まで生中継でずっと流していた。
 
 
この男性はマプチェ族の子孫とかで、マプチェの伝統を守り権利を主張しているグループのメンバーだった。
マプチェ族とは、アルゼンチンとチリ南部で暮らしていた先住民族。
南米にはインカ帝国のケチュア族など多くの先住民族がいたが、スペインの侵略により土地を奪われるなどの迫害を受けてきた。
 
 
今では純粋な先住民族は少なくなり、それぞれの国の普通の国民に溶け込んでいるが、近年、先住民のアイデンティティを取り戻そうという風潮がある。
サッカーでも先住民代表による国際(?)大会が開催されたり、先住民系だけの選手によるクラブチームなどが創設された。
 
 
そうした運動はときには過激にもなり、先のマプチェ族の一派は、先祖代々が暮らしていた土地を自らのものと主張し、そこを守るために国道を封鎖するという行動に及んだ。
これを撤去しメンバーを検挙すため、ヘンダルメリアという組織が出動した。
本来は国境警備隊のヘンダルメリアだが、最近では準警察のように市内の警備や取り締まり業務を行っている。
 
 
マプチェのメンバーは川に飛び込んで逃げたが、そこからサンチアゴが行方不明になった。
捕まって拷問されて死んだ、という憶測が流れ、それが選挙戦で対立陣営への攻撃に使われたことで、死体発見が異常なほどの注目を集めたのだそうだ。
実はホルヘ、日本にいたので、この辺の事情はよくわからないのだが。
 
 
選挙といえば、面白いのはエクアドルの大統領選だ。
そのキャンペーン期間に3度滞在したが、とにかくめちゃくちゃなのだ。
有力候補は金持ちなので、テレビを使ってライバルを攻撃する。
30秒程度のCMというレベルではなく、30分や1時間のドキュメンタリータッチ番組に仕立てられている。
そこで、おそらくはねつ造であろう、対立候補の悪行を暴き立てる。
候補者にレイプされたという女性が泣きながらインタビューに答えたり、「あいつと一緒に麻薬ビジネスをしていた」と証言するチンピラが登場したりするのだ。
 
 
そうかと思えば、選挙カーの上から現金や食料品をバラまいたりもする。
この国には、公職選挙法はないのだろうか。
候補者の夫人が貧しい村でこれを行い、押し寄せた人々が将棋倒しとなり死者が出たこともあった。
 
 
ホルヘも昨日、将棋倒しになりかけた。
コパ・リベルタドーレス準決勝のリーベル対ラヌースに行ったときのこと。
スタジアムへ着くまでに三重の検問があり、さらに各検問の50メートルほど手前に鉄扉が備えられている。
検問所が混乱しないよう、ここを閉ざして人数制限をするためだ。
 
 
そしてここが開くと、待ちかねていたサポーターが一斉に動き出す。
警官が「押すな、押すな」と叫んでいるが、誰もが少しでも早く進みたいので効果はない。
重たいカメラバッグを担いでいるし、そのバッグが人々に引っかかり振られるので、バランスを崩して転びそうになる。
ここで倒れたら後続も次々と転び圧死してしまう、というマジな恐怖を味わった。
 
 
子供連れは優先的に通してくれるが、「プレスだ」といっても特別扱いされない。
年配者も同様なので、そのうちに人命に関わる事故が起きるのではないかと心配だ。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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