41歳のレジェンドが見せた気遣い 土屋 雅史 2017年12月6日 土屋雅史, 日本サッカー J1昇格プレーオフ決勝。 勝つのと負けるのでは天と地ほどの違いがあるこの1試合を、今年も取材してきました。 細かい試合分析などはいろいろな所で語られると思うので、僕は一番印象に残ったシーンをご紹介したいと思います。 試合後。 歓喜に沸く名古屋グランパスの選手やサポーター。 風間八宏監督、佐藤寿人選手、田口泰士選手と順々にインタビューが行われていきます。 そんな中、ふとピッチ上に目を移すと、アビスパ福岡の選手が集まっている輪の中に、グランパスのGKが着用しているオレンジ色のウェアを纏った選手の姿が。 うつむいたり、茫然としていたり、なかなか現実を受け入れ切れずにいるアビスパの選手1人1人へ、順番に声を掛けながら回っていきます。 その選手とは日本代表としてワールドカップも経験している、名古屋のレジェンドとも言うべき楢崎正剛選手。 今シーズン途中から出場機会を失い、この日の90分間もベンチから見つめていた41歳が見せたその姿に正直驚きを禁じえませんでした。 「この状況でそんな気遣いができるのか」と。 今から6年前の冬。 シーズンオフの企画で、楢崎選手のコメントを撮りにグランパスの練習場でもあるトヨタスポーツセンターへ伺った時のこと。 プロ意識の高い楢崎選手が、練習後の体のケアも時間を掛けることは聞いていたので、ロッカーから出てくるのをしばらく待っていました。 そういうケースは少なくないので、同行したディレクターといつものように待機していると、しばらくして楢崎選手が現れます。 こちらからすれば楢崎正剛ですから、「おお!楢崎だ!」って心の中ではなるじゃないですか(笑) すると、日本を代表する守護神は「本当にお待たせしてすみません。よろしくお願いします」と言いながら、カメラの前まで来てくれたんです。 普通のことと言えばそうかもしれませんが、あれぐらいのキャリアがありながら、しっかりとその一言を口にされるあたりに人間性が滲み出ていて、僕とディレクターは一発でファンになっちゃいました(笑) 翻ってJ1昇格プレーオフ決勝の試合後。 相手を思いやる楢崎選手の姿を見て、僕は6年前の冬、トヨタスポーツセンターで体験した、あの日のことを何となく思い出していました。 「やっぱり楢崎選手は素晴らしい人なんだなあ」と。 インタビュー中ということもあって、中継では映っていなかったようですが、J1昇格プレーオフ決勝にまつわる出来事の中で、これはどうしても伝えたかったので、ご紹介させていただきました。 名古屋グランパスに関わるすべての皆さん、J1復帰おめでとうございます! Tweet