先週の木曜日、国会議事堂周辺で政府への大規模な抗議集会が行われた。
マクリ政権は、これまでおよそ18%ずつ増額していた年金支給額を物価上昇率に合わせようとしているが、野党である前政権クリスティーナ一派はこれに反対。
もちろん、大統領選挙でマクリに投票しながら、この件では反対という人も多数いた。
一応は政治集会であるものの、これは反対派によるパフォーマンスの場。
特に議員や労働組合指導者は、ここで警察相手に大立ち回りをして、できれば名誉の負傷をしたいところ。
クリスティーナの息子であるマキシモは、先頭に立って奮闘していた。
 
 
18%の増額はどんぶり勘定みたいなもので、物価上昇率より高い場合もある。
日本同様に年金の財源に苦しむ政府は、ここに手を加えて支出を抑えようとしている。
しかしそうなると、これまでのように増額されないケースが出てくる。
そこで、「年金を守れ」とばかりに、反マクリ陣営が結集した。
 
 
年金額を物価上昇率に合わせるというのは真っ当な方法だと思う。
しかし、その上昇率を政府が操作する危険性があるので許すことはできない、とも反対派は唱えている。
彼ら自身が前政権時代に統計局に指示して数字を操作し、「インフレはない」とでっち上げていたのだから、その可能性はあるだろう。
 
 
抗議集会も民主主義の象徴であり、穏やかに終われば問題はない。
しかし今回は一部が暴徒化し、商店のウィンドーが壊され、15台もの自動車に火がつけられた。
被害を受けたのは警察車両ではなく、路上に駐車していた一般車両。
義手・義足センター前の「障碍者専用駐車スペース」に止めてあった車まで丸焼けになった。
 

 
 
子供のころ、友達とじゃれあっているうちにケンカになった、ということがままあった。
大人になれば分別がついて自制が効くのだが、子供はふざけているうちにそれが現実に転化してしまうことがある。
どうも、南米気質というのは、それに似ているような気がする。
 
 
抗議集会に参加者の中には、はじめから警官隊に投石するなどの挑発をするつもりの過激派がいた。
しかし彼らも、罪もない障碍者の貴重な移動手段を奪おうなどとは考えていないはず。
しかし、いったん火が付くと抑えられなくなってしまうのだ。
 
 
12月13日にコパ・スダメリカーナの決勝第2戦が行われた。
決勝戦に残ったのはアルゼンチンのインデペンディエンテとブラジルのフラメンゴ。
第1戦はホームのインデが2-1で勝っている。
第2戦の前夜、地元フラメンゴのファンは、インデ選手の睡眠を妨害しようとホテル周辺で花火を打ち上げるなどの大騒ぎ。
そこからエスカレートし、リオデジャネイロまで応援に駆け付けて夜の街を散策していたインデサポーターに次々と襲い掛かった。
これも、ふざけているうちに本気になってしまったパターンだ。
 
 
試合は1-1の引き分けでインデが優勝。
フラメンゴはサポーター暴動の件でCONMEBOLから制裁を科せられることになり、踏んだり蹴ったりだった。
 
 
コパ・スダメリカーナは、昨年まで下半期の南米王者を決める大会だった。
そして上半期はコパ・リベルタドーレス。
つまり、1年に2チームのチャンピオンが誕生していた。
歴史や伝統からコパ・リベルタドーレスのほうが格は上ながら、コパ・スダメリカーナ王者も南米王者の称号を得ていた。
 
 
しかし今年からヨーロッパにならい、コパ・リベルタドーレスがチャンピオンズリーグ、コパ・スダメリカーナはUEFAヨーロッパリーグに相当するようになった。
上半期・下半期制もなくなり、両大会が並行して通年で開催される。
これにより、コパ・リベルタドーレスが最上級の大会、コパ・スダメリカーナはそれに準ずる大会と区別された。
 
 
今年のコパ・リベルタドーレスはグレミオがラヌースを下し優勝したが、ラヌースは地域限定の中規模クラブ。
それに対してコパ・スダメリカーナはメンゴとインデという人気クラブ同士の対決。
ということで、決勝戦の注目度は格下大会のほうが上回っていた。
 
 
コパ・スダメリカーナを制したクラブは、これまで通り、ルヴァンカップ(旧ナビスコカップ)王者とスルガバンクカップで対戦する。
しかし肩書は“南米王者”もしくは“南米最強クラブ”ではない。
単に、格下大会の優勝チームにすぎない。
CONMEBOLは南米王者が日本のクラブに負けるのは都合が悪いと考えていたが、これからはその心配はない。
まさかとは思うが、そのために大会方式を変更したのかもしれない。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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