今回は国籍や人種に関する微妙なテーマなので、
 
「差別的な意図はない」ということをはじめに断っておく。
 
 
 
ダルビッシュがメジャーリーグで活躍し、サニブラウンが陸上界ですい星のように輝いた。
 
サッカーのU-23でも鈴木武蔵、オナイウがリオ五輪出場権獲得に貢献した。
 
ハンマー投げの室伏もそうだし、ハーフの選手が日本のスポーツ界で重要な存在になっている。
 
外国人である父か母の優性遺伝が身体能力の高さに結びついているのであろう。
 
 
 
彼らは日本人として、ときには日本の代表として日の丸を背負って戦う。
 
そして日本のファンも、彼らに期待してその活躍に拍手を送る。
 
彼らは基本的に日本で生まれ育ち、日本の教育を受けている。
 
多くのハーフタレント同様、内面は完全に日本人だ。
 
だから、ファンも身近に感じ、応援するのだ。
 
 
 
テニス界では、最近、日米のハーフの大阪なおみが注目を集めている。
 
彼女が前述の選手らと違うのは、日本にいたのは4歳までで、その後はアメリカで育ったこと。
 
日本語もうまくない。
 
再び断っておくが、彼女を攻撃しようという意図はない。
 
ただ、一つの例として挙げているだけだ。
 
 
 
これはホルヘの推測だが、彼女が、日本とアメリカのどちらを母国と思っているかといえば、アメリカだろう。
 
4歳から現在まで住んでいるのだ。
 
しかし二重国籍を持っているので、日本人枠での大会出場や日本代表になることもできる。
 
代表でオリンピックに出ることを狙うなら、層の厚いアメリカより日本の方が有利となる。
 
競技に全力を注いでいる選手ならば、目的のために可能な選択肢を利用することは悪ではない。
 
むしろ、当然の行為といえる。
 
 
 
日本の法律では、二重国籍を有するものは22歳までにどちらかを選ばなくてはならない、となっている。
 
そこで日本以外の国籍を選択すると、日本国籍は消滅して日本人ではなくなる。
 
しかし国籍に関する法律は国によって異なり、多重国籍を永久に認めているところもある。
 
日系移民の多い南米諸国は、ほとんどがそうなっているはずだ。
 
そのような国との二重国籍をもっているものは、日本国籍を選んでも出生国の国籍は消えない。
 
また、日本の法律も強制力や罰則がない。
 
現地の大使館には、「二重国籍は違法です」という外務省だか法務省が作成したポスターが張られているが、
 
それを意に介する人はいない。
 
 
 
たとえばアルゼンチン人は、ブラジルにビザなしで入れる。
 
しかし、日本人はビザが必要(リオオリンピック、パラリンピック中は免除される)。
 
このビザ取得には、銀行の預金残高証明書が必要などとめんどくさい。
 
その一方、日本人はアメリカへはビザなしで入れるのに、アルゼンチン人はビザがいる。
 
二重国籍をもっていると、ブラジルへ行くときはアルゼンチンのパスポート、
 
アメリカへ行くときは日本のパスポートを使うことができ、非常に便利だ。
 
したがって、この恩恵を手放そうとはしない。
 
 
 
22歳までに国籍を選べ、というのはザル法なのだが、これを厳しくする必要はないと思う。
 
高齢化社会の日本に、若い日系人が逆移住してくれる道となるからだ。
 
 
 
それはともかく、海外の日系社会はこのような状況なのだ。
 
日本人の1世以降現地人と結婚を重ねれば、3世や4世には日本人の面影はほとんどない。
 
日本語は話せず、心も現地人だ。
 
それでも日本国籍をもつことができる。
 
彼らが現地で何かの競技に打ち込み、国内では4番手とか5番手。
 
しかしその競技のレベルが低い日本なら、トップになれる。
 
そう考えて、東京オリンピックを目指す日系3世、4世が現れる可能性は十分にある。
 
 
 
この是非を問うつもりはない。
 
しかしこのようなことは起こりうるので、それを予測して、
 
各競技団体はガイドラインを作成するとか、スポーツファンは心構えをしておく必要があるのではないだろうか。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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