アルゼンチンの刑務所では、受刑者が高齢になると刑が免除されたり、自宅に軟禁されて残りの刑期を務める。
金持ちの犯罪者は、豪邸で家族と使用人に囲まれ、友人たちを招いたパーティーなどを行い優雅に暮らす。
コロンビアなどでは、週末は自宅に帰れるケースがある。
 
 
そもそも死刑はないし、南米の刑罰は日本より甘いといえるだろう。
罰が軽いことが治安の悪さの一因にもなっている。
 
 
しかし、中には日本より厳しいものもある。
ブラジルはマットグロッソ州選手権のオペラリオ・ヴァルセア・グランデンセ対ルヴェルデンセの試合で珍事が起きた。
ハーフタイムのロッカールームに警官が現れ、レギュラーGKのサントスがその場で逮捕されてしまったのだ。
 
 
罪状は養育費の未払い。
離婚した際に裁判所が定めた子供への養育費を滞納したため逮捕状が出た。
日本ではあまり聞かない話だ。
 
 
同様のケースはエクアドルでもあった。
しかも、その試合はロシアW杯予選。
ただし、結果はブラジルとはだいぶ違った。
警察のターゲットとなったのは、代表FWのエンネル・バレンシア。
 
 
ブラジルW杯で3ゴールを挙げプレミアリーグのウエストハムへ移籍し代表において重要な選手の彼だが、分割で支払うことになっていた前妻への慰謝料を滞納。
エクアドル滞在中に身柄を拘束しようと、裁判所は逮捕状を出した。
試合終了後に逮捕すべく、警察も準備を万端に整えていた。
 
 
対戦相手はコパ・アメリカ王者のチリだったが、エクアドルが得点を重ね3-0とリード。
するとバレンシアは、相手選手と接触したわけでもないのに、突然ピッチ上に倒れた。
チームドクターが駆け寄り、すぐさま救護用カートを要請。
バレンシアはカートから救急車へ移され、そのままスタジアムから去った。
 
 
実はこれ、警察の動きを知ったエクアドル代表が計画したバレンシアを守るための作戦。
5日後にアウェイでのボリビア戦が控えており、ここで主力選手を失うわけにはいかなかったのだ。
そして考えついたのが、この茶番のような逃走劇。
 
 
裁判所はただちにバレンシアの出国禁止命令を出したが、これも協会が掛け合い、後日出頭することで命令を解除させた。
 
 
日本では選手が不祥事を起こすと、クラブは契約解除や謹慎処分を下し、代表選手ならチームから外すことで決着を図る。
しかし南米では、必要な戦力であれば組織を挙げて守るのだ。
 
 
そして迎えたボリビア戦。
標高2800メートルのキトをホームとするエクアドルも、同3600メートルのラパスには苦しみ、前半を終えて0-2と敗色濃厚。
しかし後半バレンシアが2発を決めて引き分けとし、協会の恩に報いた。
 

※写真はエクアドル代表のイメージ写真です。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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