サッカーに欠かせないサポーターの応援。
選手を鼓舞してプレーや勝敗に影響を与えるだけでなく、フラッグやコール、チャントがスタジアムの雰囲気を盛り上げる。
 
 
しかし、光あるところに影がある。
サポーターもそのすべてが素晴らしいわけではなく、ダークな奴らも存在する。
アルゼンチンでは、バラスブラバスと呼ばれる一団がそれだ。
元々は熱狂的なサポーターたちが集まってグループ化したものだが、人が集まるとそれを利用して利権を得ようとするものが現れる。
 
 
はじめは活動費を賄う程度の資金集めだったと思うが、今や金儲けが本業のようになっている。
しかも、その多くが非合法な活動だ。
スタジアムではチャントを歌い続け、ここぞという場面では一般サポーターを見事に巻き込む応援のリーダーではあるが、その一方でヤクザまがいの活動を行っている。
 
 
試合のときはスタジアム周辺が路上駐車の車で埋まる。
リーベル対ボカのスーペルクラシコともなれば、半径2~3キロメートルエリアが観客の車の駐車場となる。
しかしこの駐車は、公共の道路にもかかわらずタダではない。
バラスブラバスが駐車料を徴収するのだ。
建前は、「試合中、車を見張っていてあげるよ」というもの。
それを無視して金を払わないと、試合後に戻ってきたとき、愛車がボコボコにされている。
もちろん、バラスの仕業だ。
スタジアムからの距離によって料金も設定されており、近いところでは5000円くらいになる。
大きな試合なら数百台どころではすまない。
元手なしの大儲け、まさに濡れ手に粟だ。
 
 
リーベルやベレスのスタジアムは外国人大物アーティストのコンサート会場になるが、そのときも駐車料金を徴収する。
スタジアム近辺を完全にショバにしているのだ。
最近は警察も取り締まりを強化しているが、焼け石に水といったところ。
さらにチケットの横流しや転売などで莫大な利益を上げている。
 
 
そして内部では権力争いが起こり、派閥同士での殺し合いも珍しくない。
今やマフィアと変わらないバラスだが、元々は単なる熱狂的サポーター集団で、クラブとの関係も密接だった。
会長選挙はソシオによる投票なので、バラスは重要な票田となる。
当選するためには彼らを味方につけねばならず、当選後はバラスに便宜を図るということが繰り返されてきた。
 
 
近年はバラス排除を打ち出す会長も登場しているが、家に銃弾を撃ち込まれたり家族を殺すと脅されて辞任することが多い。
既得権益を守るためには、自分が応援しているクラブにまで弓を弾く無法者たちなのだ。
 
 
こういった輩が南米サッカーのイメージを悪くしてるのだが、サポーターに関する心温まるニュースもたまにはある。
チリの南部に位置するプエルトモンはロスラゴス州の州都だが、人口は18万人弱と規模は小さい。
ここを拠点としているサッカークラブはデポルテス・プエルトモンで、現在は2部リーグで戦っている。
 
 
このクラブが約1500キロメートル離れたコキンボでアウェイ戦に臨んだ。
国土が縦に細長いチリ。
北部と南部の住人にとって、ほぼ中央に位置する首都サンチアゴから先の地は遥かかなたという感じになる。
プエルトモンの人にとって、コキンボはそういった町だ。
 
 
そうなるとサポーターもアウェイ戦に足が遠のき、この試合に来たのはなんと1名だけ。
見事に閑散としたアウェイスタンド。
そこにポツンと1人、プエルトモンの男がいた。
 
 
応援に行ったらスタンドがガラガラだったということはありえるが、日本人だったらそんな場合、比較的おとなしく観戦するのではないだろうか。
しかし、このサポーターは違った。
仲間がいようが独りぼっちだろうが、やることは同じ。
立ちっぱなしでチャントを歌いフラッグを振ってチームを鼓舞した。
 
 
彼の応援の甲斐あって、試合はプエルトモンが2-1で勝利。
チャントの独唱はボリュームが小さいものの選手には大歓声より響くらしく、プエルトモンの選手は、「この勝利は君のものだ。我々を信じてくれてありがとう」とのメッセージをツイッターに挙げた。


 
 
さらにチリ代表のスターでバイエルン所属のビダルもこのことを知ると、「これこそ真のサポーターだ」とSNSで絶賛。
悪行三昧のバラスには、このような純粋なサポーター精神を取り戻してもらいたい。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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