先日、ウチナンチュー・ゴルフ愛好会という団体のコンペに参加した。
アルゼンチンの日系人は約7割が沖縄出身で、在亜日本人会よりも在亜沖縄県人会のほうが建物も組織もはるかに立派だ。
 
 
沖縄出身者が多いのはアルゼンチンに限ったことではなく、戦前からハワイ、ブラジル、ペルーなど、新天地を求めて多数のウチナンチューが出稼ぎや移民として故郷を後にした。
そのため、現在では同県出身の海外移住者による国際的組織まである。
 
 
このウチナンチュー・ゴルフ愛好会は、そのような他国の沖縄出身移住者とゴルフで交流を図る目的で設立されたと聞いている。
ホルヘはウチナンチューではないが、メンバーに知り合いが多いので過去にも2回このコンペに参加させてもらった。
 
 
するとプレー中に同会の幹事から、「100円払えば、そのあとは会費もなくて一生会員だから入会してよ」と誘われた。
ちなみに100円とは100ペソのことだ。
日系人の中には、ペソのことを円という人が少なからずいる。
 
 
沖縄とは縁もゆかりもない人間が正会員になるのもいかがなものかと思いつつ、「会員になると、何か特典はあるの」と訊くと、「この大会に出られる」との答え。
しかしホルヘは会員ではないのに、現実にこのコンペに参加している。
会員になる意味がない。
幹事はしつこく入会を誘うわけでも、「入らないと、次回から参加させない」というわけでもなかったので、その場は適当に話を濁した。
 
 
ホールアウト後の会食では、成績上位者の表彰と110周年記念ゴルフ大会の説明が行われた。
なんでも今年は、沖縄県人がアルゼンチンに移民してから110年目なのだそうだ。
8月に沖縄県人会主催で記念行事を行い、そこには沖縄県や他の国からも関係者が列席するという。
そして、ウチナンチュー・ゴルフ愛好会が中心となって記念コンペを開催するとのことだった。
 
 
そして最後は、お楽しみ抽選会。
今回は不参加だった時計店の主が景品を寄付してくれた。
これに参加するのは図々しいかなと思い、件の幹事に、「非会員だから、抽選会は遠慮します」と申し出た。
ところが幹事は、「いいの、いいの。今日の参加者全員に権利があるから」という。
それならば、ということで参加したら、腕時計が当たってしまった。
さすがにそのままでは気まずいので、即座に100円(ペソ)を払って入会した。
 
 
一度払えばその後の年会費もなく一生有効だという入会金の100ペソは、この会が発足したときにはそれなりの価値があったのだろう。
なにせ2001年までは1ペソ=1ドルの固定相場だったので、100ペソは100ドルだった。
そのときも相当無理をしていたようで、経済学者によれば、1ドル=2.80ペソというのが適正な相場だと語っていた。
 
 
その後経済は破綻し固定相場も吹っ飛んで、ペソは下落の一途をたどる。
日本と行ったり来たりのホルヘは、買い物をしたときに円換算をする癖がついている。
昨年は1ペソが約7円と計算していたが、今年は1ペソが約5.5円になっている。
だから、100ペソは約550円。
これで永久会員とはただみたいなものだ。
 
 
なぜ入会金を時勢に合わせて上げないのか不明だが、他のものは軒並み値上げされている。
日本でもこの4月から多くのものの価格が上がったが、上昇率は一桁のパーセントがほとんどで、最大でも10%だろう。
しかしアルゼンチンはそんなものではない。
庶民の足のバス代ですら、6.25ペソから9.25ペソへ一気に値上げ。
ガス、電気などの公共料金も同様だ。
 
 
こうしたインフレを象徴する出来事が4月末にあった。
それは、2ペソ札が使用できなくなったこと。
銀行では5月末まで両替できるものの、商店での支払いなどには使用できなくなった。
 
 
釣銭で財布の中がいつのまにか2ペソ札で一杯になるので嫌いな紙幣だったが、市場から消えてしまうとなると、なにやら切ない気持ちになる。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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