ボリビアはラパスの名門クラブ、ザ・ストロンゲストは今年4月に負けるまで、コパ・リベルタドーレスのホームゲームで19戦無敗を誇った。
内訳は14勝5分けで、2013年4月のサンパウロ戦(2-1)から今年3月のペニャロール戦(1-0)まで5年間に渡っての記録だった。
ラパスは標高3600メートルの高地。
ビジターは、酸素が薄く息が上がるだけでなく、頭痛や吐き気などの高山病の症状に襲われることもある。
気圧が低いためボールが伸び、平地とは異なる軌道にも悩まされる。
 
 
ボリビアが最後にW杯出場を果たしたのは、1994年アメリカ大会。
そのときは“エル・ディアブロ”エチェベリや“プラティニ”サンチェス、クリスタルド、ソリア、横浜マリノスでプレーしたバルディビエソらタレントが揃っていた。
しかしその後は、高地という武器を持ちながら低迷が続いている。
選手の育成、クラブ及び代表の強化が進んでいないようだ。
一体、ボリビアのサッカー界はどのようになっているのだろうか。
 
 
参加クラブをAとBのグループに分け、各グループでリーグ戦を行い、それぞれの上位4チームがタスキ掛けのトーナメントに進む大会でのこと。
グールプBのサンホセは、2位に勝ち点9もの差をつけて1位となった。
トーナメント1回戦の相手はグループA4位のデストロイヤー。
第1レグはホームのデストロイヤーが1-0の勝利。
そして第2レグはサンホセが8-0で圧勝した。
しかし、ここからなぜかPK戦に突入。
 
 
大会のレギュレーションで得失点差を認めていないのだ。
得点の多さに関係なく、1勝1敗ならPK戦で勝ち上がりを決めるようになっている。
通常のシステムだと、第1レグを0-3で落とせば、その時点で敗退がほぼ決まる。
サポーターの多くもあきらめてしまう。
しかし1勝1敗ならPK戦というルールなら、第2レグを1-0にすれば勝ち上がる可能性が出てくる。
サポーターは応援に駆け付ける。
第1レグを3-0で制したチームのサポーターもうかうかできず、スタンドで応援することになる。
 
 
観客動員という目的では、このシステムは効果がありそうだ。
しかし、競技の公正という点では大いに疑問だ。
今回はサンホセがPK戦を制したが、苦労してリーグ1位となり、トーナメントでトータル8-1としながらPK戦で負けたら、選手はたまったものではない。
それまでの努力と結果がすべて水泡に帰してしまう。
協会が興行を重視しすぎたため、「がんばっても報われない」あるいは「ずっとがんばらなくても、運次第で勝てる」という意識が選手に浸透しているかもしれない。
そのような考えは、努力や戦意の低下につながるのではないか。
 
 
ボリビアは経済的に不安定で、それがサッカー界にも悪影響を及ぼしている。
1部リーグのウニベルシタリオ・デ・スークレ対ウィルステルマンでのこと。
この日、U・スークレの選手は給料未払に抗議してストを行っていた。
しかし協会は特別な措置を取らず、試合は予定通り行われることになった。
 
 
選手がいないU・スークレは、ユース選手をかき集めてスタジアムに到着。
しかも、サブメンバーなしの11人ジャストで、GKは何と15歳。
当然、ボコボコにやられ、前半を終えて0-8の大差。
そして後半が始まると、ピッチに戻ってきたのは7名のみ。
4名は疲労と負傷でリタイアとなった。
そして後半開始2分、さらに1人が負傷で動けなくなり、7名に満たなくなったため主審はそこで試合を打ち切った。
 
 
一体、選手登録の制度はどうなっているのだろう。
プロ選手がスト中だからといって、ユースの選手だけでプロリーグに参戦可能なことが不思議だ。
 
 
選手が6名になったので打ち切りとなった試合は他にもある。
レアル・ポトシ対グアビラでのこと。
R・ポトシの選手4名がレッドカードをもらい、後半30分に1名が負傷でプレー続行不可能となった。
すでに交替枠を使い切っていたため、主審は打ち切りを宣言。
するとR・ポトシのグティエレス会長は激高し、「やつは卑しい犯罪者だ。買収されてうちが負けるようにした」と主審を提訴した。
 
 
もし主審が買収されていれば、それはボリビアサッカー界が汚れ切っていることの証だが、もし公正に笛を吹いていたとしたら、4名もが退場処分を受けるのは、選手のモラルの低さを物語っている。
乱闘では数名が同時に退場になることはあるが、今回はそうではない。1人ずつ減っていったのだ。
 
 
このR・ポトシのグティエレス会長は何かと問題のある人物のようで、彼が協会から認められた会長であるにも関わらず、ソシオによる会議でサントスが会長に任命された。
しかしグティエレスは、「会長は自分だ」と居座っている。
そして何と、それぞれの会長が独自に監督と契約を結び、選手たちは両監督の元に二分された。
 
 
同一クラブ内に2名の会長、2名の監督と2チームが存在するという異常事態。
2チームは別々の場所で練習を行っている。
 
 
そしてついに、試合の日が来た。
主導権争いによるトラブルが起こる恐れもあり、警察が出動してそれに備えた。
そして話し合いの末、両監督ともベンチに入らず、指揮は両チームのキャプテンに任せるということとなった。
ちなみに、試合は1-1で引き分けた。
 
 
なんとも信じられないことばかりだが、これらはすべて、ボリビアの1部リーグで今年起きている。
過去に遡れば、似たようなスキャンダルはまだまだあるだろう。
このような状況では、W杯への道は険しくなるばかりだ。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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