1年前は暮れの競輪グランプリと年明けの鳳凰賞典でかなり儲けた。
しかし今回のグランプリは、1着となった無印の佐藤からも流したものの、3連単の2着が的中せず。
4日開催の鳳凰賞典は、3日目と4日目それぞれ5レース買って的中は1回。
しかしそれが26000円車券だったので少し浮き、グランプリと合わせてチャラという感じだった。
 
 
競輪は日本発祥のスポーツで、今やケイリン競技として五輪種目にもなっている。
元々は戦後復興の財源を得るために発足された公営ギャンブルで、競艇とオートレースも同様だ。
この3種目に以前からある競馬を加え、通称「3競オート」と呼ぶ。
 
 
アルゼンチンにはもちろん競輪も競艇もオートレースもないが、競馬はちゃんとやっている。
しかし日本のような人気はなく、賞金も安い。
ホルヘの知り合いの日系一世に、20年ほど前まで馬主だった人がいる。
彼によると、アルゼンチンの馬は丈夫で骨折しにくいのだそうだ。
土壌が肥沃でミネラルが多く、そこに生える牧草を食べることで馬も強くなる。
このため競馬の盛んな国から注目され、仔馬の段階で買われていくことも多いという。
 
 
この元馬主は成功者で、小さいながらも競馬でビルを建てた。
前述したように賞金が安いので、馬主は儲けようと思ったら馬券を的中させなければならない。
彼が関わっていたのはかなり昔なので今はどうか知らないが、馬主が儲けるためにはいろいろな策略があったそうだ。
まずは配当を挙げたいので、2~3レース凡戦を続けて人気を落とす。
もちろん、調教師と騎手も仲間だ。
負けるつもりでも調教はしっかり行い、馬のコンディションは仕上げておく。
見た目の馬体が素晴らしいのに惨敗するから人気が下がるのだ。
しかしコンディションが良いと、競走馬の本能で突っ走ってしまい、騎手が抑えても好走してしまう恐れがある。
騎手としても疑惑を持たれたくないので、抑えるにも限度がある。
 
 
そこで行われるのが、レース前に水を飲ませること。
こうすると馬は闘争本能が消えるらしい。
馬主、騎手、調教師は横のつながりもあり情報が豊富。
たとえ自分の馬が出なくても、「このレースでは、有力馬の○○と××は負けに来る」という情報が入れば、残りの馬の中で勝ちそうなものに投票する。
また、今ではさすがに行われていないだろうが、当時は薬物も使われていたという。
かなりきつい薬で、実力以上のパフォーマンスを発揮させるが、心臓に極度の負担をかけるそうだ。
これを使うと、馬はすぐに死ぬこともあるし、死ななくても競走馬は続けられない。
元々走らない馬や全盛期を過ぎて人気のなくなった馬にこれを投与して、大穴馬券を取ることもあったという。
 
 
ギャンブルあるところに不正や八百長は起こりやすい。
最近の日本でも、東北の地方競馬では薬物検査の陽性反応がたびたび起きている。
もっともこれはドーピングでなく、部外者による業務妨害目的の可能性が高いらしい。
数日前には、競艇選手が八百長で逮捕されたとうニュースがあった。
親戚と組んで、故意に順位を下げて高配当の舟券にしたそうだ。
 
 
競輪でも大昔は八百長があったという。
暴力団とつながっている選手が、開催中に選手が宿泊する施設内でレースを作ってしまう。
選手たちは、そこで決められた順位通りにゴールする。
宿舎内の選手は軟禁状態で、外部とは電話での接触もできない。
このため車券販売前に行われる、バンクをゆっくり周回する選手紹介の際に、巧妙なサインで会場にいる暴力団員に談合で決めた順位を知らせていた。
 
 
現在はそのような不正はないはずだが、競輪にはラインとか人間関係が存在する。
ラインとは2~4人による選手の協力で、主に東北ライン、埼京ライン、近畿ラインなど同地域の選手で結成し並んで走る。
カーレースのF1と同じで、チームで戦いワンツーフィニッシュなど上位独占を目指す。
ラインで決まるのを「筋車券」といい、確率は高いが配当は低い。
異なったラインの選手同士で決まる「筋違い」は高配当が多く、穴党のホルヘはこれを狙っている。
 
 
基本はラインの全員が1着を目指すのだが、若手がラインの先頭で師匠や先輩を引っ張る場合、師匠らを勝たせるためにハイペースで飛ばすことがある。
自分は惨敗覚悟のうえだ。
勝つ気がないのだから片八百長といえるが、この人間関係を考察しながら予想するのが競輪の面白さでもある。
弟子の犠牲によりロートルの師匠が、実力上位選手に勝つこともあるのだ。
 


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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