今回のU-23代表は、VARを含めかなり判定で泣かされた。
カタール戦で取られたPKは、主審がVARで確認もせず。
テレビで解説していた松木さんは、「逆に相手が蹴ってるじゃないか」と怒りをぶつけていた。
ボールを蹴ろうとしていた相手選手に後方からタックルしたとVAR室の審判が判断し、「あなたのジャッジは間違いない」と主審に伝えたのだろう。
しかし、微妙なプレーではある。
ビデオを見れば、主審がジャッジを変えたかもしれない。
あのケースでは、VARで確認すべきだと思う。
 
 
プレーを見る角度によって、反則に見えたりそうでなかったりすることがある。
しかし同じ角度、さらにいえば同じビデオを見ても人によって判断がことなることもある。
上級審判員を対象とした研修会でビデオが見せられた。
ゴールキックが蹴られ、FWが自分の後方を確認していち早くボールの落下点に入った。
遅れたDFは相手の肩に腕を乗せるようにしてジャンプし、結果は二人とも転倒。
これを見た参加者の意見は、「相手DFが後方から来ることを知り、腰を突き出して転倒させたからFWのトリッピングだ」というものと、「DFが後方から不正なチャージをしている」との二つに分かれた。
そしてその割合はほぼ半々だったという。
経験豊富な上級審判員でも、同じビデオを見てこれだけ判断が違うのだ。
カタール戦のPKも、主審とVAR室の審判の意見が同じとは限らない。
 
 
結局、判定というのは、主審にどのように見えたかが判断材料となる。
大昔の全国高校サッカー選手権で、GKと相手FWが交錯し、離れ際にGKが相手を殴ったとして退場処分になったことがある。
まだ警告や退場のルールが緩く、高校生はマリーシアなど知らず真面目にプレーする時代だったので、かなりセンセーショナルな出来事だった。
試合後、スポーツ紙のインタビューに対しGKは、「殴るふりをしたけど、相手にさわっていない」と答え、一方のFWは、「手は当たったけど、殴られたわけではない」と説明した。
最も重要な、接触があったかどうかという点で、当事者間の話が異なっている。
たとえば主審がその場で両者に、「殴ったか?殴られたか?」と質問しても両者の答えが違っていれば判定は下せない。
したがって、主審は自分が見たことを判断材料にする。
実際に殴っていなくても、主審が殴ったと見たら退場になる。
もちろん副審などの進言を取り入れることはあるが、基本は主審の目だ。
 
 
VARシステムの試合では、よほどハッキリとした反則でない限り、主審はPKを取らずにあえてプレーを続行させてVARに頼ることが多い。
ホイッスルを吹いてPKにしてしまってから、VAR室から、「DFの脚は相手FWに当たっていない。明らかなシミュレーションだ」と進言されたら、自分でVARを見てから判定を取り消さなければならない。
これは大変みっともない。
カタール戦の主審は、よほどの自信をもってPKを取ったに違いない。
VAR室もその判定を支持したので、自分でVARによる確認はしなかった。
しかし国際審判員といえども、トップクラスのボクサーや卓球選手のような動体視力は持っていない。
実際のプレーを見るのとビデオで見るのとでは正確さに違いがある。
 
 
それでも彼はあえてVARを見なかった。
南米的な考えでこの行動を読むと、「カタールに買収されているな」ということになる。
カタールは次回W杯開催国で、U-23といえども代表の躍進は義務付けられている。
あの試合は、勝たなければグループリーグ敗退という状況だった。
となれば、カタール協会が何か画策してもおかしくない。
主審のタキは中東系でなくシンガポール人だが、現在は中東で孤立しているカタールにとってはかえって好都合。
このように考えると、田中の一発退場も納得がいく。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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