ベネズエラが大変なことになっている。深刻な電力不足のため、4月上旬にマドゥーロ大統領は、金曜日も休みの週休3日制とすることを発表。その席で、「ヘアドライヤーを使わず、自然に乾かすように」とも訴えた。

この週休3日制は緊急措置であり、約1か月の期間限定ということだった。しかし1日休みを増やしても思ったように節電効果は上がらず、計画停電により、電気が使えるのは1日わずか4時間。

そこでマドゥーロは、4月下旬に次の手を打った。それは、公務員の週休5日制。なんと、月曜日と火曜日しか仕事をしないのだ。すべての公務員というわけでなく、警察や消防などのような職種は通常勤務ながら、いわゆるお役所仕事は週に2日だけとなった。

5日休んでも給料は保証されるが、役所が休みばかりでは民間の会社でも影響を受けるところは多く、業績は悪化する。しかし、そちらに対する保証はない。したがってこれに抗議する無秩序なデモが多発し、街灯が40本に1本しか点かず夜間は真っ暗なため略奪などの犯罪が横行している。

もともとベネズエラは南米の中でも物騒な国。ホルヘは2007年のコパ・アメリカで訪れた際、ちょっとした相談があって日本大使館へ足を運んだ。そこで職員から、「大使館がある地域は安全で、日本から来た大使館員はみなそこに住み、できるだけ地域外に出ないようにしている」と聞いた。そんな国が、今はさらに危険な状況になっている。

ベネズエラは世界有数の産油国で、2007年のレートで計算したら、ガソリン1リットルが何と約5円だった。もっとも5円で売ったら石油会社もスタンドも儲からない。政府が補助金を払い、消費者は5円で購入し、売る側は補助金で利益を得るシステム。

街にはタクシーと路線バスの中間のような交通手段がある。決まったルートを走る乗用車に、客が相乗りするもの。手を挙げれば止まってくれるので、バス停まで歩く必要がなく便利だ。そしてこれに使用されているのが、1950年代や60年代もののアメ車。乗用車だが、とにかくデカイ。助手席に2人、後部座席に4~5人座れる。

大型だから乗り合いには向いている。しかし、もともと燃費が悪いうえに50年選手となれば、リッター1キロメートル程度ではないかと思う。それでも商売が成り立つのは、ガソリンが5円だからだ。

コパ・アメリカ中は各会場を回るのだが、ベネズエラではホテルの確保が大変だった。結局、メリダではタクシー運転手の家に民泊させてもらった。その家は夜中もクーラーをガンガンつけっぱなし。「止めてくれ」といっても聞いてくれず、寒さに震えあがってしまった。そのときは、「さすが産油国。電力も豊富だ」と感心したのだが、なんでも電力の約6割が水力で、今年は雨不足のため電気が足りないのだそうだ。

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ベネズエラ代表の愛称は「ビーノ・ティント」(赤ワイン)。これはユニホームの色から来ているのだが、対戦相手からすれば、「おいしい相手」という意味もある。南米で唯一W杯出場経験がない国だからだ

しかし若手の育成が徐々に実を結び、2011年のコパ・アメリカ(アルゼンチン)ではベスト4に進出。その勢いで念願の初出場をブラジルW杯で果たすかと思われたが、惜しくも叶わず。その後は主力選手多数が協会に反旗を翻し、「協会が変わらなければ、代表の試合に出ない」とボイコット。そのせいで、現在行われている南米予選では、6試合戦って勝ち点1の最下位。またしても、南米最弱のおいしい相手に戻ってしまった。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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