チリはワインが有名で、日本へもたくさん輸出されている。
 
聞くところによると、ヨーロッパでブドウの病気が蔓延し、ある人気種が絶滅したが、
 
遠く離れたチリは被害を免れその種が育っていたため、
 
それからこの国のワインが世界的に注目を集めるようになったそうだ。
 
 
 
需要が高まったことで生産技術も研究され、絶滅種という希少価値だけでなく、
 
ワインとしても一流品になった。
 
アンデス山脈を挟んだアルゼンチン側も気候は似ており、ブドウの栽培とワイン造りに適している。
 
元からこの地域でもワイン造りは盛んだったが、チリが社会主義軍事態勢となったとき、
 
裕福な醸造者たちは迫害を恐れて山を越え、その高い技術もアルゼンチンにもたらされた。
 
 
 
しかし、チリの酒は他にもある。
 
ブドウを原料とした焼酎ピスコだ。
 
度数は30度前後。
 
この酒はペルーでも造られていて、どちらが本家かでいつも争われている。
 
以前、日本の大手酒造メーカーが、たしかペルーのピスコを使ったカクテルを販売し、
 
説明書きに「ピスコはペルー生まれ」というようなことを書いたら、
 
チリ政府から抗議されたという話を耳にしたことがある。
 
 
 
ピスコのカクテルといえば、ピスコサワーが有名。
 
シロップ、レモン果汁に卵白を加えて混ぜた、甘酸っぱくてクリーミーな一杯。
 
しかしこれは少し気取った飲み物なので、一般の人は炭酸飲料で割ることが多い。
 
 
 
南米の人は甘いものが好きだ。
 
いい大人が、コーラやファンタを飲みながら食事をしている。
 
だから慣れているのだろうが、ホルヘにはコーラ割ピスコは甘すぎる。
 
したがって水割りか炭酸割りがメインとなり、独特の香りを押さるためにレモンを絞る。
 
 
 
コパ・アメリカでチリに滞在した約2週間、まずワインを1本空け、
 
それからピスコに移るパターンをほぼ毎日繰り返した。
 
アルゼンチンに戻って1か月以上が過ぎた今、なぜか無性にピスコが吞みたくなる。
 
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About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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