アルゼンチンやウルグアイの特産にカルピンチョの革製品がある。
 
カルピンチョとは、カピバラのこと。
 
日本では温泉につかる姿が可愛いと動物園の人気者になっているが、あちらではその肉を食し革も利用する。
 
とはいえポピュラーな食材ではなく、それを食べる習慣があるのは、生息地に住む人だけ。
 
ブエノスの肉屋で見たことはない。
 
一度だけ缶詰を食べたことはあるが、味や食感は鶏肉に近かった。
 
 
 
肉が地産地消されるのに対し、革は都心に送られ加工される。
 
革の特性は、バックスキンで非常に柔らかく、オストリッチのような斑紋があること。
 
そして最大の売りは、革なのに水洗いができることだ。
 
内側も外側も汚れやすい手袋には、うってつけの素材といえる。
 
 
 
ホルヘは10数年前にまず手袋を買い、その後ベルト、ジャンバー、靴とカルピンチョ製品を増やしていった。
 
現在は値段が上昇し、ジャンバーも6万円くらいするが、以前は3万円程度だったと思う。
 
 
 
年末、カルピンチョの靴を履き小雨で濡れ始めた道を歩いていると、右足が濡れて冷たくなった。
 
靴をよく見ると、ソールのつま先部分がすり減って穴があき、さらにアッパーとの接合部の糸が切れていた。
 
ようするに、底に穴がいたうえ、つま先がパコパコになったのだ。
 
たしか1万円もしなかった靴だが、日本では珍しい革なので、修理代が安く済むなら直そうと思った。
 
 
 
家の近くのスーパーマーケットに、靴などの修理コーナーがある。
 
大手チェーンの取次店だ。そこで相談すると、修理方法を丁寧に説明してくれ、費用は4500円くらいだという。
 
本社工場に送るため、通常は約2週間だが、年末年始を挟むので1カ月掛かるともいわれた。
 
4500円は問題ないが、1か月は長すぎる。
 
 
 
そこで、近所にある他の店も当たってみた。
 
2件目は、「うちでは扱いかねる」との答え。
 
つまり、修理不可能というのだ。
 
革が柔らかすぎるから、縫い直すと破れる恐れがあるとのこと。
 
ところが3軒目では、1800円で翌日に仕上がるという。
 
そこの修理方法は1件目とほぼ同じだが、1工程が省略される。
 
さらに工場へ送らず自分で直すので、早くて安いのだ。当然、そこへ頼んだ。
 
 
 
靴の修理で、対応がこれほど違うのには驚いた。
 
しかしこうしたことは、医者や病院でも起こりえることだ。
 
セカンドオピニオンを求めることは、やはり重要なのだろう。
 
もし2件目の店にしか行かなければ、修理不能ということで靴は捨てていた。
 
ここが病院だとすれば、「手の施しようがありません」といわれ、坐して死を待つしかないのだ。
 
しかしセカンド、いやサードオピニオンを求めたおかげで、1800円の名医に出会うことができた。
 
 
 
もっともこの医者が実はヤブで、すぐにソールが剥がれてしまう可能性もある。
 
まあ、そのときはそのときで諦めよう。
 
 

 

 
 
 
ホルヘ・ミム~ラ
ラテンのフットボールを愛し、現在はDieguitoアルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。
取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企てては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。
ヘディングはダメ、左足では蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。
女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。


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ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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