毎晩酒を呑んでいるホルヘだが、毎年1カ月だけ禁酒をする。
 
35歳で健康診断をしたとき肝機能検査の数値が高かったので、1か月抜いて正常値に戻した。
 
それ以来、1か月禁酒が恒例となった。
 
 
 
いつからか、ホルヘの周辺ではこの禁酒月間が「ラマダン」と呼ばれるようになり、
 
「ラマダン入りの前に一杯やろう」とか、「ラマダンはいつまで?」などの会話がなされるようになった。
 
アルカイダが知ったら、「大切な宗教行事を冒涜している」と激怒し、テロの標的にされてしまうかもしれない。
 
 
 
今年はラマダン入り前夜と明けの翌日に、同じ店に行って痛飲した。
 
小田急線の代々木上原駅東口にある、ESOLAというワインバーだ。
 
雑誌で知った店で、1999円でワイン呑み放題というのにひかれた。
 
しかも、普通の呑み放題は90分とか2時間とかの制限があるが、ここは時間無制限。
 
ワインは赤、白、スパークリング合わせて約50種類あり、セルフサービスで勝手にグラスへ注ぐ。
 
少量ずつ色々試してもいいし、気に入ったものがあれば、それをガブガブ呑んでもいい。
 
 
 
代々木上原は高級住宅地でお洒落な街だ。
 
そのため客も上品な人が多く、呑み放題なのに数杯のワインで早々に帰るケースが多い。
 
しかしホルヘは酒に関しては下品だし、ラマダン直前と直後という、冬眠前後のクマのような状態なので、
 
なんと5時間も居座って呑み続けた。
 
 
 
ラマダン明けに痛飲した翌日は、約10kmのマラソン大会に出場。
 
これはホルヘが通うバーが行う恒例行事で、日頃不健康な暮らしをしているお店のママと常連客が集って走るもの。
 
今年が4回目で、これまではホルヘがぶっちぎりで全勝している。
 
南米からやって来ては優勝をさらっていくので、「海外招待選手」の異名を頂戴した。
 
しかし今年は練習不足と前夜の深酒で大苦戦。
 
週末に走っているという初参加のランナーにピッタリマークされ、ヒタヒタという足音でプレッシャーを受ける。
 
ペースを上げて振り切ろうにも、脚はパンパン、胸はバクバク、息はゼーゼーでどうにもならない。
 
しかし、それはそのランナーも同じだったらしく、かろうじて1位をキープしてゴールへ駆け込んだ。
 
 
 
そしてマラソン大会の翌日、「ラマダン明けたら呑もうよ」と約束していた知人と、
 
またしてもESOLAでワインを呑みまくった。
 
 

 

 
 
 
ホルヘ・ミム~ラ
ラテンのフットボールを愛し、現在はDieguitoアルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。
取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企てては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。
ヘディングはダメ、左足では蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。
女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。