サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする。
とかいう格言を聞いた覚えがあるが、そんなの嘘っぱちだ。
5月5日にスーペルクラシコが行われた。
ボカは今期から名将ビアンチが復帰。
試合前に、リーベルを率いるJリーグ初代得点王のラモン・ディアスと
ビアンチが抱擁するシーンでも撮ろうかと、ホルヘはベンチ前で待っていた。
ボカのホーム、ボンボネーラは、ベンチのあるメインスタンドの敷地が非常に狭い。
したがって普通の椅子席は僅かで、そこからビルのように上へパルコ席(個室)が造られている。
パルコ席はもちろん、メインスタンドは椅子席も入場料がとても高い。
スーペルクラシコならさらに値が上がる。つまり、お金持ちでなければ入れないのだ。
バックスタンド側から入場した選手がサポーターへ挨拶し、バックサイドのタッチライン際で集合写真に納まる。
その間に監督たちは、ピッチを横切ってベンチへ向かう。
数年前までは、カメラマンも集合写真を撮ってから、ピッチを横断してベンチに行くことができた。
しかし今は禁止されたので、集合かベンチのどちらかしか撮れなくなった。
まず初めにビアンチが到着。
そしてラモン・ディアスがやってきたが、ボカのベンチには一瞥もくれず、真っすぐ自分のベンチへ向かった。
挨拶する気はないようだ。ベンチはスタンドの真下で、観客とは目と鼻の先。
そこへ近づいたディアスをカメラマンが狙う。もちろん、ホルヘもその中のひとりだ。
すると、スタンドからディアス目がけて唾の雨が浴びせかけられた。
彼は警官の盾で守られていたため、被害はなし。
しかし無防備なホルヘはどうしようもなく、頭や背中に多数被弾した。
メインスタンドには、お金持ちやハイソサエティの人たちしかいないのにこの様だ。
なにが、「サッカーは大人を紳士にする」だ。
試合中はゴール裏で10歳くらいの子どもが相手選手を口汚く罵っている。
その口調は、とても子どもとは思えない。「サッカーは子どもを大人にする」というのは正しいのかもしれない。
しかし、碌な大人にならないだろう。
試合終盤にはゴール裏席で大量の発煙筒と打ち上げ花火が点火され、その上金網にまでよじ登りはじめて一時中断。
このせいで、次のホームゲームは無観客試合とするペナルティが科せられた。
本当にどうしようもないサポーターどもだが、これがまた、南米らしくて楽しいのだ。