熱血指揮官が“信州”を変える 土屋 雅史 2013年10月19日 土屋雅史 先週の土曜日、湘南新宿ラインに揺られ、 ナビスコカップ準決勝が行われる横浜をそのまま通過し、 向かった先は平塚。 湘南ベルマーレユースと松本山雅FC U-18が対戦する Jユースカップ予選リーグを取材するため、 馬入ふれあい公園の天然芝グラウンドへ足を運びました。 ゲームは地力に優る湘南ユースが大量6ゴールを奪って快勝。 何人かはトップチームの練習にも参加しているとのことで、 躍動感あふれる“湘南スタイル”を体現しており、 今後が楽しみになるようなゲームを見せてくれました。 ただ、今回私が馬入まで取材に訪れた最大の目的は、 この日大敗を喫した松本U-18の指揮官に話を聞くため。 一度はJリーグのトップチームで采配を振るった男が信州の地に居を移し、 どのような想いで、どのような日々を過ごしているのかを、 是非聞いてみたいと思ったからでした。 松本U-18を率いるのは岸野靖之監督。 J2時代の鳥栖を昇格争いの常連にまで押し上げると、 横浜FCではGMを兼任しながらチームを構築した、 “魂の指揮官”とも形容できそうな彼は今、 長野県3部リーグを戦う高校生のチームを率いています。 「育成年代の所からプロ選手を創りたいという 大きな狙いというかビジョンがあったので、今回それに参加しました」という 岸野監督が、松本U-18の監督に就任したのは2月のこと。 話を聞くと、選手たちには想像していた以上に “基本”が備わっていなかったそうで、 肌感覚としては他県より3,4年くらい遅れているのではないかと。 それは、この高校年代に差し掛かる前の指導が しっかり為されていないからだと感じてらっしゃるようで、 そういう指導者育成の部分にも手を付けていく必要性を感じていると、 県全体としての課題を指摘します。 それでも、そこは岸野監督ですから 「これからもいっぱい色々なことがあると思いますけど、 彼らのまだまだな部分に僕が軽く負けてしまわないように、 『おまえらの色々な部分の低さに、俺は負けへんで』と思ってます。 そう思ってないと、長野ではやっていけません」と豪快に笑ってもくれるわけです。 目下最大の課題は決まった練習会場がないこと。 普通に公共施設を予約して使用しているような状況で、 「始まる前も終わった後も自分の課題に取り組むこともできないんです」と。 そのために「個人の課題を積み上げていくことも全然できないんですよね」と、 もどかしい現状も明かしてくれました。 最後に「率直に言って楽しいですか?」とストレートな質問をぶつけると、 少し間を置きながら 「こんなことを俺がしていていいのみたいなのはありますけど、 やっぱり彼らを何とかするという所にすべてを持ってきて、 彼らと一緒に何かを変えていかないと、自分も何も掴めないと思っているので、 焦る気持ちもある中で、それもエネルギーに変えられないと、 自分自身のためにならないかなというのは凄い感じています」と 正直な気持ちを話してくれた岸野監督。 熱血指揮官が信州の地で葛藤しながら、 どんな“色”を残していくのかは、今後も注目し続ける必要がありそうです。 写真は馬入の観戦エリアになる土手の上からです。 Tweet