アルゼンチンに着いてすぐ、ボカ対リーベルのスーペルクラシコがあり、
 
リーベルが10年ぶりにアウェイのボンボネーラで勝利を挙げた。
 
そしてその試合前に、ちょっと面白いことと気になることがあった。
 
まずは、審判員のためのフィジカルコーチだ。
 
主審と副審も選手並みにアップをこなすが、それは彼ら自身で行うもの。
 
ところがこの試合では、フィジカルコーチみたいな人が仕切って3人にメニューを与えていた。
 
代表のウェアを着ていたが、何者かは定かでない。
 
こうした例は他でもあるのだろうか。少なくとも、ホルヘが眼にしたのは初めてのことだった。
 
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そして気になったのは、ボカの集合写真撮影の時、
 
「マルビーナスはアルゼンチン」という幕が選手の前に掲げられていたこと。
 
 
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「マルビーナス」とは、日本では英名の「フォークランド」で知られている、アルゼンチン近くの諸島だ。
 
イギリスと領有権を争っており、1982年には約3か月間の戦争も勃発し、アルゼンチンの降伏で幕を閉じた。
 
一般に「フォークランド紛争」と呼ばれているが、紛争ではなく立派な戦争だった。
 
現在はイギリスが実効支配しているものの、敗れたアルゼンチンも自国領であることを主張している。
 
そして、試合の4日後が「マルビーナスの日」という祭日に当たっていた。
 
 
 
これは、「北方領土は日本のものだ」とか「竹島は日本の領土です」というのと同じこと。
 
ロンドン五輪の3位決定戦後、韓国の選手が「独島(竹島)は我々の領土」という
 
メッセージを掲げて物議をかもした。
 
政治的スローガンは五輪憲章に違反するので、一時メダルの授与が留められた。
 
FIFAも政治をサッカーに持ち込むことを禁止しており、
 
この選手に罰金と2試合の代表戦出場禁止処分を科した。
 
それなのに、ボカはやってしまったのだ。
 
 
 
元々南米の各国は、あまりFIFAを重視していない。
 
「南米のことはCONMEBOL(南米サッカー連盟)が仕切るから、ガタガタいうな」というスタンスだ。
 
わずか10カ国ではあるが、強豪が多いうえ組織も一枚岩なので、
 
FIFAとしても無下には扱えない一大勢力といえる。
 
今回の件も、「クラブW杯でやったらまずいが、国内リーグなら黙認するだろう」と高をくくっていたに違いない。
 
 
 
しかしこれとは別に、「FIFAがウルグアイにW杯出場停止の制裁をする」というニュースが
 
チリ地震の前日に飛び込んできた。
 
これは、同国のムヒカ大統領がサッカー連盟に不当な圧力をかけ、
 
協会のバウサー会長をはじめ役員全員を辞任に追い込んだ疑惑があるからだという。
 
FIFAは、サッカーへの政治の介入や政府が協会を不当にコントロールすることを許さない。
 
 
 
ウルグアイリーグではサポーターによる傷害事件が後を絶たず、
 
政府が協会にしっかりと防御策を取るよう働きかけていた。
 
しかし経済面で苦しい各クラブは積極的に動かなかったため、
 
政府は二大クラブのペニャロールとナシオナルの試合に警察の警備を派遣しない決定を下した。
 
これによりペニャロールの試合は延期となり、協会幹部らは辞任することになった。
 
 
 
この件も実は、本当にFIFAが制裁するのではなく、ウルグアイ協会がFIFAを利用しているのだと思う。
 
CONMEBOLの会長はウルグアイ人のフィゲレドなので、彼の口利きでFIFAを動かし、
 
政府を引っ込ませようという腹に違いない。
 
大統領のせいでW杯に出られないとなったら、人気は失墜して政治生命も終わる。
 
大統領の言う安全の強化は正しいのだが、すぐに対処はできない。
 
そこでFIFAを引っ張り出して、お引き取り願おうとしているのだろう。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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