W杯真っ盛りだというのにゴルフの話で申し訳ないが、先日のコンペで面白い経験をした。
 
ブラジルのパラナ州で豪雨被害があり、イグアスの滝の水量は過去最高を記録したという。
 
サンパウロは水不足と聞いたものの、その他の場所では雨が多いようだ。
 
隣国のアルゼンチンも最近は雨がよく降る。
 
そのおかげで、ゴルフ場もグチャグチャだ。
 
 
 
フェアウェイの状態が悪いときは、ゴルフ場がローカルルールとして
 
「6インチルール」を適用することがある。
 
ボールがある場所、すなわちライが悪ければ、6インチ内(ホールに近づかず)に
 
ボールを移動して打つことができるのだ。
 
これは合理的な考えのアメリカで考案されたもので、
 
ゴルフ発祥の国イギリスではこのルールを蔑む人が多いと聞いた。
 
マルビーナス(英名フォークランド)諸島問題でイギリスと仲が悪いせいか、
 
アルゼンチンで6インチルールは一般的だ。
 
 
 
ところが、それを上回るルールに先日のコンペで出会った。
 
雨で軟弱となったコースの芝を保護するため、2打目以降もグリーンまでは
 
ティーアップして打て、というのだ。
 
「ティーアップしてもいい」ではなく、「ティーアップが義務」だという。
 
 
 
ホルヘと一緒に回った人は、バンカーからもティーアップした。
 
さすがにそれは違うだろうと思い、ハーフ終了後キャディーマスターに訊いたら、
 
「当たり前だ、バンカーとハザードはだめだ。フェアウェイとラフだけ」と言われた。
 
なにしろ馴染みのないルールなので、皆とまどっていた。
 
 
 
はじめこのルールを聞いたとき、「今日は凄いスコアが出るぞ」と思った。
 
なぜなら、2打目以降でもドライバーが使えるからだ。
 
非力で距離の出ないホルヘにとって、これは大いに助かる。
 
 
 
ところが終わってみると、いつもよりスコアが悪い。
 
不覚にもプレー中は気付かなかったが、原因ははっきりしている。
 
実に論理的なことなのだ。
 
ドライバーは、ホルヘが最も苦手なクラブ。
 
ちゃんと当たって真っ直ぐ飛ぶ確率が最も低い。
 
つまり、最もミスショットが多いのだ。
 
そのクラブを1ホールで2回も3回も使えば、それだけミスするのが道理。
 
「今後同じルールに遭遇しても、2打目以降はドライバーを使わないぞ」と帰りの車中で誓ったのだった。


About The Author

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

Related Posts