アルゼンチンが日本に2連敗を喫した。
アジアカップの3戦目ウズベキスタンと4戦目のサウジアラビアの監督はともにアルゼンチン人。
ウズベキスタンがクーペルでサウジはピッシだった。
両者ともグループリーグは突破したが、トーナメント1回戦で敗退した。
 
 
ピッシはスペイン国籍も持っており、現役時代はスペイン代表でプレーしていた。
2016年にチリを率いてコパ・アメリカ優勝。
翌年にサウジ監督に就任してロシアW杯に出場した。
ロシアに大敗したがエジプトに勝ち、19年まで契約が延長されていたものの、日本に敗れたことで辞任を表明した。 
 
 
ホルヘが驚いたのはウズベキスタンのクーペル。
彼は2000年と翌年、スペインのバレンシアをチャンピオンズリーグ準優勝へと導いた。
バレンシアは名門であるものの、それまでは世界的強豪クラブではなかった。
それをあと一歩で欧州王者というところまで押し上げたので、指導力が高く評価された。
アルゼンチン代表監督の候補にもなったが、「いつも決勝で負ける」「シルバーコレクター」という反対意見を聞いて、さすがアルゼンチンと感心したことを覚えている。
 
 
その後はインテルやギリシャ代表を率い、ロシアW杯にはエジプト代表監督で出場。
それが今やアジアのサッカー小国ウズベキスタンの監督だ。
報酬もそれなりだろう。
バレンシア時代の輝きを知っているだけに、「都落ちしたな」という思いが強い。
 
 
ベトナム戦はVARで損したり得したりだった。
先制点が取り消されたのは、まさにVARの真骨頂だった。
先日、メキシコリーグのチーバス対トルーカ戦でも、VARでゴールが無効になった。
焦点はボールがゴールラインを完全に超えたかどうかだった。
主審はビデオを何度も何度もスロー再生。
それに掛かった時間はなんと6分間。
全豪オープン準決勝での大坂なおみのサービスエースのように、ほんの僅かながらラインに重なっていた。
 
 
このように時には時間が掛かり、試合のリズムを崩してしまうVARだが、正確に判定を下すことができる。
日本でも、ルヴァン杯のトーナメントに導入するという。
 
 
主審にとっても、VARは非常にありがたい。
堂安が倒された時のようなケースでは、今まではそこでジャッジを下さねばならなかった。
しかしVARがあれば、「とりあえず流しておこう」ということができる。
つまり黒か白かの二択から、「後回しにする」という選択肢が増えたことになる。
 
 
PK判定を下すのは、主審にとって勇気のいることだ。
もしPKの判定が誤りなら、大きな批判を受けることとなる。
それをVARに任せれば、まずミスジャッジにはならいので安心だ。
したがって主審は、瞬時に判定を下さずVARに頼る傾向が強くなっている。
今後、VARが導入される大会は増え続けるだろう。
しかし、すべての大会がそうなるわけではない。
ホルヘが危惧するのは、VARシステムというぬるま湯につかった上級主審たちが、VARなしの大会で正しいジャッジが下せるかだ。
きわどいPKは取れないに違いない。
数年後には、PKジャッジを下せないことを「VARシンドローム」略して「バルシン」という新語で呼ぶようになるかもしれない。
 
 
つい先日、FIFAがニジェール人のチャイボウ審判に永久追放処分と20万スイスフランの罰金を科した。
理由は、サッカー賭博の胴元と共謀して試合をコントロールしたため。
10年の南アフリカ5-0グァテマラ、11年に行われたナイジェリア4-1アルゼンチンのテストマッチで不可解な判定を連発し、反則がないのに計3回のPKを取った。
試合前には10万ドルを受け取ったことも判明している。
 
 
胴元は、公式戦よりチェックが甘いテストマッチを狙ったと思われる。
このようなことを防止するため、今後はテストマッチでもVARが導入されるかもしれない。
VARではモニタールームで複数の審判が映像を見て、主審の見落としやミスがないかどうかを注視している。
主審とすれば監視されているようなもので、とても意図的に試合コントロールはできない。
 
 
「サッカーは人間が行うから面白い」というのがVAR反対派の主流意見でホルヘもそれに賛成だが、サッカーが世界的にここまで肥大し社会への影響が大きくなった今、トップレベルの試合はテクノロジーに頼らざるを得ないのだろう。


About The Author

ホルヘ三村

ラテンのフットボールを愛し、現在はgol.アルゼンチン支局長として首都ブエノスアイレスに拠点を置き、コパリベルタドーレス、コパアメリカ、ワールドカップ予選や各国のローカルリーグを取材し世界のメディアに情報を発信する国際派フォトジャーナリスト。 取材先の南米各国では、現地のセニョリータとの密接な交流を企でては失敗を重ねているが、酒を中心としたナイトライフには造詣が深い。 ヘディングはダメ。左足で蹴れないという二重苦プレーヤーながら、美味い酒を呑むためにボールを追い回している。 女性とアルコールとフットボールの日々を送る、尊敬すべき人生の達観者。

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